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一本だたらは恋をする

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 ケーキとコーヒーを奢ってもらった手前、どうも無下にできず、結局このような脱線だらけの相談に乗ることになったのだが、時間の無駄をひしひしと感じるところである。
 さて、話を聞くに、その鈴木君はどうも相当のモテメンだそうだ。そりゃぁ、喫茶店のウェイターをやってる鈴木君とか聞くと、爽やか系イケメンかアイドル系イケメンを想像してしまうし、それらの想像に恥じぬモテっぷりだとか。はて、そんな話聞いた覚えはない、と思ったが、よく考えたら自分にはそんな話をするような友達がいなかったのだ。
 悲しさと虚しさを租借する日曜の昼下がり。
 ――まあ、そのモテっぷりは確認しないことには話も進まない。私たちはその鈴木君の見物の為に、喫茶店からまた次の喫茶店へと向かうという喫茶店の梯子を敢行することになったわけである。
 道中様々なことがあったが、ここでは記述しない。何せこのお話の根幹を成す独白である為、ネタバレ回避の為にも後に回すことにしたのだ。
 さて、件の喫茶店に辿り着く。そして、運よくその鈴木君の姿を拝むことに成功したわけだが。
「ほら、モテモテでしょうっ!」
「あー、うん。そうだね。モッテモテだね」
 頭がへしゃげたドライバー、首から紐を下げている女、まだ生まれてもいない赤子、血を吐きながら笑うおっさん、毛布お化けなどなど。老若男女、人外にまで大人気、モテモテである。
「霊媒体質だったかー」
 私は頭を抱える。ますます手に負えなくなってきた。人と人との付き合いであるならまだしも、そこに妖怪とかお化けとかUMAとかが絡んでくるともうダメだ。神様私に何か恨みでもあるのだろうか。おら、よーこさんワロスとか書き込んでないでどうにかしやがってくださいよぅ。
「あ、あの。私、どうしたら。あんな人垣ができてるなんて!」
「あー、うん。どーすればいーんだろうね」
 私に訊かれても困る。というかアレは人垣なのだろうか。最早集合霊とかその類なんじゃないのだろうか。
「あー、やば。吸い込まれる。あそこに行きたいよぅ」
「行けばいいんじゃないかなぁ」
 あんた、それも彼の霊媒体質にやられちゃってるんじゃないのだろうか。それは恋ですか? いいえ、ゴーストマグネットです。
「とりあえず客として利用しよう。そして、話をして仲良くなる。まずはそこからだと思うよ」
 そう、私は人間相手にするようなアドバイスでお茶を濁す。だってそれしかないし。他に良い方法があるのならどうぞこの子に教えてあげてください。
「そ、それじゃあ。その作戦で。あ~、緊張する」
 私は緊張より脱力感と無気力感で身体が重い。元々なかったやる気が秒単位でゴリゴリ削れて行く。もう家に帰ってぐっすり眠りたい。
「あ、あぁぁ、二人でっ!」
 喫茶店に突撃する真菜子を横目に、私は太陽の沈む方向へと目をやる。さっさとこの茶番が終わらないモノかと願うのだった。喫茶店だけに。

作品名:一本だたらは恋をする 作家名:最中の中