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サバ系男前彼女と肉系不憫彼氏

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風邪ひきました



凛は鮫柄学園の寮の自室のベッドで寝ていた。
眼は閉じているが、意識はある。眠いわけでもない。
風邪をひいたのだ。
高い熱があり、食べたものを何度かもどしてしまった。
身体がだるい。
こういうときは妙に心細くなるな、と思う。
小学校卒業後にオーストラリアに水泳留学したときのことを思い出したりもした。
ふと。
ドアが開けられる音がした。
同室の似鳥だろうと凛は予想した。
凛は眼を開けた。
そして、近づいてくる者の姿を見て、びっくりした。
「ハル……!?」
思わず凛は上体を起こした。
遙はいつもの無表情で凛を見ている。
「おとなしく寝ていろ」
冷静な声で凛に言った。
凛はベッドに身を横たえる。
そのあいだに遙がベッドのすぐそばまで来て、腰をおろした。
「風邪をひいたというおまえからのメールを見て、来た」
遙は岩鳶高校の制服を着ている。
遙に携帯電話を持ち歩く習慣がないので、おそらく学校から家に帰ってから凛のメールを見て、ここに来たのだろう。
「だが、ここは男子校の寮だぞ……? おまえ、いったい、なんて言って、この寮に入ってきたんだ?」
妹の江すら、岩鳶高校水泳部の男子部員たちと一緒でなければ、この寮には入ってこなかった。
凛の質問に対し、遙は平然と答える。
「結婚を前提に松岡凛と交際している者だと言って入ってきた」
「……まあ、オレもそのつもりだから、別にいいけどな」
勢いでプロポーズのような台詞を何度か遙に言ったことがあるし、ただの勢いではなく、凛は本気でそう思っているからこそ言ったのだ。
それにしても、相変わらずの遙の男前っぷりだ。
遙はなにかを思い出したような表情をした。
「そういえば、ここまで来るあいだに、あれが松岡のウワサのドS彼女かと話してる声が聞こえてきたんだが、ドS彼女というのは、とってもサバな彼女という意味か?」
「ちげーよ! どんな彼女だよ、それ! ってか、なんで、ちょっと嬉しそうな顔してんだよ!?」
「サバと言われたら嬉しいに決まってる」
「決まってねぇ!」
凛は遙内ヒエラルキーにおいて自分はサバより下であるような気がしてならない。
声を荒げたせいか、凛は咳きこんだ。
手を口へとやる。
苦しい。
少しして、咳がおさまった。
口へとやっていた手を頭の横のほうへやった。
その手に、手が重ねられる。
遙のやわらかい手だ。
凛は遙の顔を見た。
遙の顔には表情は浮かんでいない。
その唇が開かれる。
「早く、良くなれ」
あまり感情のこもっていない声。
でも、いつもと比べれば、遙の気持ちがわかる声だった。
心配しているのだろう。
それも、すごく。
だいたい、遙は学校から帰ってすぐ、凛からのメールを見て、制服姿のまま、ここまでやってきたのだ。
どれだけ心配しているのか、わかる。
どれだけ想われているのか、わかる。
気恥ずかしいが、嬉しいと思う。
幸せを感じる。
「……あんまり近づくな、うつる」
凛はゆるみそうになる顔をどうにか引き締めつつ、ぶっきらぼうに言った。
しかし。
「うつしたほうが早く治ると聞いたことがある」
むしろ遙は近づいてきた。
凛は驚く。
「バカ言うな。それって、うつされたほうは長引くってヤツだろ」
「それでも、いい」
そう告げた遙の顔が近い。
遙に自分の風邪をうつすわけにはいかない。
そう思う。
けれど。
今はどうやら貴重な遙のデレ期であるらしい。
この機会を逃していいものか。
いやいやいやいや、風邪をうつすわけには……!
凛は葛藤する。
そして。
「……おまえに風邪がうつったら、オレが看病しに行ってやる」
結局、凛は遙の顔のほうに手を伸ばした。
遙の頬に触れる。
触れられた遙の口元に、かすかな笑みが浮かんだ。
つい、凛も笑った。
それから、キスを。
しようとした。
だが。
ガチャっと部屋のドアが開けられる音がした。
続いて。
「凛先輩、だいじょう……って、ええっ!?」
似鳥の声がした。
そちらのほうに眼をやると、似鳥が眼を大きく開いて立ちつくしていた。その頬が赤い。
凛の視線を受けて、似鳥はビクッとした。
「あ、あのっ、す、すすす、すいません、すぐ出ていきますから!」
そう言うと、大慌てで似鳥は部屋から出ていった。
バタンと音をたててドアが閉められた。
また部屋に遙とふたりきりなる。
けれども。
「……さすがに、続ける気にはならないな」
冷静な声で遙が言った。
すっかりさめた様子で遙が離れていく。
どうやら貴重なデレ期は終わってしまったらしい。
似鳥ィィィィーーーーーーー!!!!!
凛は胸の中で叫んだ。