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守護霊カメラ

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翌日の朝、俺は新聞を読んでいて、地方欄の片隅の記事を見て驚愕した。
それは、電車の人身事故の記事で、被害者は遮断機が下りている踏切に進入して、電車に轢かれたとのことだった。
俺が驚いたのは、その被害者が島田だったことだ。
昨夜、島田は俺と別れたあと、自分のアパートの最寄駅で電車を降り、踏切を渡って自宅に帰る途中、事故に遭ったのだ。
記事によると、踏切は両側からバーが下りてくるタイプで、両方のバーが下りたときにその間にわずかの隙間ができる。スマホを見ながら歩いていた島田は、踏切が鳴っているのに気付かずに、遮断機のバーの隙間をするりと抜けてしまったとのことだった。

島田の通夜は郷里の静岡で執り行われた。
俺も久々に実家に帰り、島田の通夜に参列した。
焼香のあと、ふと思いついて、『守護霊カメラ』を起動して通夜の祭壇を覗いて見た。
たくさんの花に囲まれた遺影と、その下の菊の花に埋もれた白い布に覆われた棺が見える。画の端に、見覚えのある貧相な男が写っていた。
驚いた俺は、スマホから目をずらして肉眼で祭壇を見てみた。もちろん、肉眼では何も見えない。
スマホを通したときだけ見える貧相な男は、灰色のスーツを着て俯いていた。男が立っている場所は、ちょうど棺の島田の顔の辺りだった。まるで棺を透かして島田の表情を窺っているようだった。
食い入るようにスマホを見続ける俺の目に、俯いていた男が顔を上げるのが見えた。
男は通夜の席をぐるりと見回した。そして、俺と目が合うと、にたりと笑った。
俺は慌てて構えていたスマホを下ろし、『守護霊カメラ』を終了させた。
足早に通夜の会場を後にしながら、俺は考えていた。
背後に立っている霊は、守護霊とは限らない。憑りついている霊、憑依霊だって背後に立っているだろう・・・
なんだか、急に俺の肩がずっしりと重くなった気がした。

通夜から実家への帰り道、尿意を催した俺は、途中の小さな公園にある公衆トイレに入った。
用を足したあと、手を洗いながら、鏡で自分の顔を見た。そう言えば、自分を『守護霊カメラ』で見たことが無いことに気が付いた。
俺はスマホを取り出して、『守護霊カメラ』を起動し、鏡に映った自分の顔をスマホに写してみた。
液晶画面に写った俺の後ろには、もやっとした男の姿があった。その男の姿は、徐々に輪郭が明瞭になって行く。目を凝らしてその人影を見つめていた俺は、その顔が判別できるようになった瞬間、恐怖に襲われて慌てて『守護霊カメラ』を終了させた。
そのまま大急ぎで『守護霊カメラ』をスマホからアンインストールする。
『守護霊カメラ』を通して俺の背後に写っていたのは、青白い貌に薄ら笑いを浮かべた島田だった。


- 完 -
作品名:守護霊カメラ 作家名:sirius2014