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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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ぼくらの時代

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団塊の世代と呼ばれ、敗戦の後で有りながら子供は沢山いた。誰もが貧しく食べるのがやっとの生活のなかで育ち、米はもちろんのことパンなども配給制度であった。アメリカから支給された粉ミルクは貴重な栄養源であった。クラスは50人を超え、教室はとても狭く感た。
 さらにノミや虱がいて,DDTを頭からかけられた。そんな生活のなかで、いつも感じていたのは親の働く姿であった。父や母が働いてくれるから、学校にも行けて、ごはんも食べられると感じていた。だから自分が大きくなったら、父や母には恩返しがしたいと思っていた。父や母には幸せになって貰いたいと思っていた。
 いざ社会人となり、結婚をしてみると、そこには嫁と姑の関係があった。自分が想っていたような家庭は出来なかった。父はすでに他界しており、私は母のために結婚を急いだのだったが、それは結果として裏目に出た。母は家を出た。私は離婚を考えたが、子がいたので妻と話し合った。
「お前が苦労するのはあとわずかなはずだ。母には幸せになって欲しいから、我慢出来ないか?」
「あなたは私を選ぶのお母様を選ぶの」
「どちらも大切だよ」
「毎日辛いの。お掃除をした後お母様はわざとお掃除したり、テレビを見ていれば洗い物をしてみたり」
「やらせておけばいいじゃないか」
「そうはいかないわよ」
私には妻の気持ちは理解できなかった。
私は離婚も考え母にその事を相談した。
「少しでもゆみさんの負担を少なくしようと思ったのだけれど、お互い言葉が足りなかったようね。のんびり1人で暮らす。お前たちは若い者の考えがあるだろうから」
「母さんに苦労かけ、自分たちが幸せになれないよ。離婚しても母さんと暮らす」
「馬鹿だね。子供たちが可哀そうだよ。私の人生より子供たちの方が大切だろうが」
「母さんの後わずかな人生を幸せに生きて貰いたいよ」
「嬉しいけれど、お前が幸せになってくれる事が母さんは1番嬉しいよ」
 そんな会話を思い出す。母は83歳で他界した。
 そして、自分の子供たちが結婚した。娘は嫁ぎ、倅は婿に行った。自分たちの老後は自分たちで生きて行こうと思っている。でも時々考える。そのために蓄えをし、働く事は淋しい気がする。子や孫と時々食事をする楽しさ、生きている家族の感じ、母が伝えたかったものは、この事のように感じ始めた。あの時に離婚しなかったから、今の幸せがある。
 やはり、誰か、子供たちと暮らすのが良いのかもしれない。老人ホームや妻と2人の生活は淋しいと思い始めた。お金がなくては幸せに生きられないかもしれないけれど、老後のために残したお金は、別の使い方もあるのだと悟った。
作品名:ぼくらの時代 作家名:吉葉ひろし