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七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
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グランボルカ戦記 外伝3 前日譚:カズン

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「はぁ・・・甘いですよ。皇子。」
「そ、そうか?」
 カズンの指摘にアレクシスが資料を見直す。
「何よ、皇子の言う事に文句があるわけ?」
「あるのは文句ではなくて改善点です。」
 クロエの言葉を一言で切って捨てると、カズンは話を続けた。
「・・・いいですか?ここをこっちに持ってくれば・・」
「お・・・なるほど。さすがだな、カズン。」
「まあ、このくらいならどうってことは無いですよ。ねえ、クロエさん。」
 ニヤニヤと嫌な視線を投げかけるカズンにクロエは悔しそうな表情を浮かべる。
「く・・・オカマみたいな喋り方の癖に。」
「いえいえ、身内とは言っても、いつまでも子供みたいな話し方をするのはいかがなものかと思い、私はこういう話し方をしているのです。おわかりですか?」
「おわからないわよ!どう考えたってあたしを馬鹿にするためでしょうが!」
「まあまあ、二人とも。喧嘩なんかやめなよ、皇子が呆れてるじゃないか。」
 全員分の紅茶を入れながらルーファスがのんびりと仲裁に入る。
 しかし、カズンとクロエの言い合いはエスカレートしていき、だんだんと雲行きが怪しくなっていく。
「は・・・いいのか、あの事まだ皇子に言ってないんだろ、今言っちまおうかな。」
 エスカレートしたカズンが昔の口調に戻ってクロエを挑発する。
「卑怯者!」
「卑怯でもなんでも結構だね。っと、あぶねえな。当たったら死んじまうだろ。」
 クロエの投げた鉄扇を受け止めてカズンが文句を言う。もちろんクロエは当たって死ぬような威力で投げては居ないし、カズンにしても黙って当たるような訓練はしていない。
「・・・ああ、いいことを思いつきましたよクロエさん。」
 鉄扇を開いてとじてしていたカズンが口調を改める。
「この鉄扇に絶対消えないインクでアリスの名前を書いてしまいましょう。ついでにお姉ちゃん大好きとも付け加えましょうか。」
「な・・・なんていう地味な嫌がらせ。ていうか、さっさと返しなさいよ本当にやったら怒るからね。」
「どうしましょうかねえ・・・。」
 喧々囂々と言い合いを続けるクロエとカズンを横目にアレクシスとルーファスはお茶をすすりながら外を眺めていた。
「なあ、ルー。」
「なんです?」
「カズンの言っている、クロエが僕に言っていないことってなんなんだい?」
「・・・だから、僕の口からは言えませんて。」
「そうか・・・。」
 しょんぼりと肩を落とすアレクシスと、喧嘩をするクロエとカズンを見てルーファスはなんとなくおかしくなって思わず吹き出した。そして、そのルーファスの笑顔を見たアレクシスはまじまじと一言つぶやく。
「ルーは最近、笑顔がアリスっぽくなってきたな。」
「失礼な、僕はあんなに腹黒くないですよ。」


「へくちゅ。・・・失礼しました。」
「アリスさん風邪ですか?気を付けないとだめですよ。」
「いえ、これは多分、昔の仲間がよからぬ噂をしているのではないかと。そしてそれはきっとボケッとした男性二人な気がします。」「わあ、男性二人に噂されるなんて、アリスさんってモテモテなんですね。」
「・・・そんないい物じゃないですよ。」
 オデットの言葉にそう返して窓から空を見上げ、アリスは同じ空の下に居る仲間達を想って笑った。