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刻印

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(その1)


 クラスメイトの大半が登校しているであろう時刻を見計らっての登校は、私の日課である。
 笑顔で挨拶を交わす。
 女子はその大半と。
 男子はクラスの人気者の数人と。
 明るい女子生徒にはよくある光景だが。
 この行動には二つの意味がある。
 まず、私に対して敵意を抱いている奴がいないかを確認する。例えばおはようを返してこない奴がいれば、要注意だろう。他には、おはようとは言うものの、その内心、おはようと言いたいとは思っていない奴は、特に注意するべきだ。眼を見ればなんとなく、その気配を感じ取ることができる。
 敵に対しては早い内に手を打つことが必要なのだ。だから朝一番のチェックを行う。
 そして、私に対するクラスメイトの好感度を高める、もしくは好感度の高さを維持する、そういう意味もある。体調が悪そうな生徒がいたら大丈夫かと気配りを忘れない。
 笑顔で挨拶を続け、気配りを忘れない限り、現状で敵が発生することは稀である。
 この挨拶は、敵を作らず、かつ万が一に敵が現れてもそれを早期に発見するという大事な役割を持っている。
 とりあえず、挨拶はおおむね予定通り成功した。当然だろう。
 万人に愛される女子生徒はこうして維持されている。それが完全な演技で、完全な偽善者だということを、恐らく誰も知らないだろう。知られては意味が無い。知られたら、おしまいだろう。
 だから常々思うのだが、演技でも何でもなく、正真正銘の愛される生徒というのが、ほんとうに羨ましい。
 例えば身近な例として姉を挙げることができる。勉強ができて可愛い顔つきで、人付き合いがうまく、性格がいい。
 この条件を、私は満たしている。
 しかし、私と姉とでは全く違う。
 本質的な違いを挙げるなら、それは無意識的に先の条件を満たすことができるかどうか、という点である。
 私のように無理などしなくても、自然体にして万人に愛されるべき人間でいられるのが、姉なのだ。
 私はもう、常に苦労して条件を満たしている。意識しないでは満たし得ない。
 すこしでも気を緩めれば、ぼろが出る。
 形式的な違いを挙げるとすると、色々あるだろうが、生徒会長を務めていたかどうか、というのが分かりやすい。
 生徒会長というのは、校内の雑用を一手に引き受ける、苦しい職務である。
作品名:刻印 作家名:咲会伶俐