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シロクロモノクローム

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第十一話:最適化完了



「なんですか? この丸っこいの」
ぼくは、目の前に浮かんでいる、水色の透明な球体をつついた。球体はまるでゴムボールのような感触で、つついた部分はへこみ、指を離すとゆっくり元に戻った。
「それはお前専用のデバイスだ。まあ簡単に言えばパソコンのキーボードみたいなもんだな」
「随分と奇抜な形のキーボードですね」
「当たり前だ、世界自体が奇抜なんだから」
それもそうか。ぼくはなんだか妙に納得してしまった。
世界が奇抜だから、それを構成するものも奇抜。
屁理屈だけれど理屈は通っている。
「で、これはどうやって使うんですか?」
「両手ではさみこむように持ってみな」
ぼくは言われた通りに、自分の前にあるデバイスを両手で挟みこむように持ってみた。
すると、透明なデバイスの中で、何かの文字が浮き上がってきた。
【ユーザー名"ナナ"用にデバイスを最適化します】
その後はすごかった。手に持っていたデバイスが、まるで生き物のようにぼこぼこと動きだしたのだ。ぼくはどうすればいいかわからないので、クオリアさんの方を見た。
「どうすればいいんでしょうか?」
「まあ見てろ」
仕方なく、僕は目の前のデバイスに目を戻す。
縦長になったり、横長になったりしながら、デバイスの形は変化する。
最終的に、デバイスはまた、元の水色の透明な球体に戻った。
そして、デバイスの中で、【最適化完了しました】という文字がうかんだ。

作品名:シロクロモノクローム 作家名:伊織千景