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月影町の怪談

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壱 旧校舎の幽霊

月影小学校六年二組の木下岬は、その日教室の掃除当番であった。
「ああ、いやだなぁ」
岬は思わず呟く
夕方の教室はなんだか暗くて怖い。
しかも同じ当番だった者が風邪で休んでしまい、1人で掃除するはめになってしまった。
早く終わらせて帰ろう。
そう思い、ゴミ箱を持ち、旧校舎にあるゴミ捨て場に向かった。
旧校舎は歴史が明治開校と言うもありとても古く、歩くと床がミシミシと言う音がした。
 雰囲気も、新校舎と違い、なんだか重く感じられる
岬は一階にあるゴミ捨て場にゴミを捨てた。
いつもなら用務員の大門がいるのだが、今は見回りでいないようだ。
「さー帰ろ帰ろ。」
岬はわざと明るい声で言うと教室に戻ろうとした、その時だった。
「グス…グス…」
「!」
後ろから泣き声が聞こえ、振り向くが誰もいない
気のせいかと思い、ゴミ捨て場から出ようとしたが、まだ聞こえる。
ふと、岬は親友の知美から聞いた話を思い出した
「ねぇ、知ってる?旧校舎にあるゴミ捨て場に男の子の幽霊が出るんだって!」
岬の顔はサッと青ざめた。
早く教室に逃げようと思うのだが、体が金縛りにあったように動かない。
段々、泣き声が近くなってくる感じがした。
「グス…寂しいよ…誰か…」
「っ…!?」
ふと、足下に違和感を覚え恐る恐る見てみると青白い顔をした男の子が顔から血を流し、泣きながら自分の足を掴んでいた。
「キャアアアアアアアア!」
岬の叫び声が旧校舎に響いた。









    1時間目 旧校舎
朝から学校ではある噂が絶えなかった

「知ってる?六年の木下さん、あの旧校舎の男の子の幽霊を見たそうよ」
「ああ。それで今日学校休んでるって噂よ。」
平岡清光が通う四年に組の教室に入ると、その話題で持ちきりだった。
「ふわぁ…。」
清光は小さく欠伸をすると自分の席に着いた。
噂をしていた女子グループの一人が清光に気がつくと声を掛けた。
「あ。おはよう。キヨ君。」
「おはよう。」
風がふわりと吹き、少し長めの清光の髪が揺れた。
「きゃっ。清光君っていつみても綺麗な顔しているわよね。うちのクラスに転校して来て良かったわ。」
「でも。なんだか近寄りがたくない?」
「けっこう家の事情が複雑みたいよ?」
「ああ。ご両親が亡くなって、親戚のお兄さんの家で暮らしてるって。」
「へー。」
「…ねぇ、キヨ君。」
声を掛けられ、振り向くと先ほどまで女子グループと話していた少女と目があった。
彼女の名前は青葉紅葉。
このクラスの学級委員長で、面倒見も良く二ヶ月前にこのクラスに転校してきた清光にも世話をよく焼いてくれた。
「キヨ君はどう思う?幽霊の話」
「うーん…いるんじゃないかな。」

清光は外を見ながら答えた。
紅葉は小声で言った。
「ねぇ、なんなら今夜行ってみない?」
「え?どこに?」
清光は驚いて紅葉を見た
紅葉は旧校舎に決まってるじゃないと言った。
「私、どうしても気になるの!一緒に行こうよ。」
「はっバカじゃねえの?幽霊なんているわけないじゃん。」
声の方を向くとクラスの男子のリーダー格の北嶋恵がお供の宮沢と共にニタニタと笑いながらこちらを見ていた。
彼らは清光が転校してきた初日から何かと絡んできた。
「何よ。そんなのわからないでしょ!」
紅葉は眉間に眉を寄せ、嫌そうな顔をした。
「なら俺もそれに連れてけよ。お前も来い転校生。」
「…ああ。」
「んじゃ決まりだな。」
紅葉が少し残念そうな顔をしたのに清光は気づかなかった。
チャイムが鳴り、担任の美園先生が入ってきたので話は終わった。
授業中、清光はずっと旧校舎の幽霊について考えていた。

 放課後になり、清光は紅葉達と五時に門の前で待ち合わせる約束ををした。
「じゃあな。紅葉、転校生。遅れるなよ。」
恵は相変わらずニヤニヤと笑いながらそう言うと、帰って行った。
紅葉はその後ろ姿を見ながら嫌そうな顔をした。
「私、あいつと四年間一緒のクラスなんだけど本当に嫌な奴なの!なんでいつも絡んでくるのかしら!」
恵はきっと彼女の事が好きなのだろう。
清光はそう思ったが、口に出さず俺たちも帰ろうと言った。
清光が住んでいるのは大きなマンションだ
月影町で一番大きいマンションらしい。
中もとても大きく、清光は何度か迷った。
「ただいま。」
 清光が、居間に行くと福住千歳が煙草を吸いながら、テレビを見ていた。
今人気の推理小説家で、整った顔立ちから主に女性に人気があるらしい。
清光の“遠い親戚”で一年前、唯一の家族であった母を亡くし親戚中をたらい回しにされていた清光を千歳が二ヶ月に引き取ったのである。
「あ、おかえり〜キヨ君」
 千歳は清光に気が付くと煙草を消し、へにゃりとした笑顔を向けた
「あ、そうだ。千歳さん」
 清光は千歳に今日五時に紅葉たちと学校に遊びに行くと伝えた。
今朝の旧校舎の幽霊と肝だめしについては話さないでおいた。
彼は小説家の他に霊や妖怪を相手にする《祓い屋》と言う裏の仕事も行っていた。
何度か清光は千歳に助けられた。
憑かれやすく、体の弱い清光が霊などにかかわるのを嫌がっていた
「あんまり遅くなるんじゃないよ。」
心配そうに言うと分の腕にしていた数珠を清光に渡した
「俺の力が入っている数珠だよ。何かあった時に役に立つから持って行きなさい」
透明な珠がキラリと光った清光は自分の腕にはめた
「ありがとうございます。」
そう言うと千歳は嬉しそうに笑った


五時になり、清光が校門の前に行くと、もう2人は来ていた
「お、来たな。んじゃ旧校舎に行こうぜ」
恵はそう言うと楽しそうに鼻歌を歌いながら先を歩いた
「ちょっと、なんであんたが仕切るのよ!」
「まぁまぁ。青葉、俺たちも行こう。」
怒る紅葉を宥め、清光達も後に続いた

旧校舎の扉を開けるとギギィと低い音がした
「暗いわね。」
「ああ。」
紅葉の言葉に恵がうなずいた
清光はケットから懐中電灯を出すと付けた
三人は恐る恐る道を進むとギシギシと床が鳴った
「本当に古いんだね。」
「ここ、もうすぐ建て直しするらしいわよ。美薗先生が言ってたわ。」
紅葉がそう言った時、何処からかカタッと音がした紅葉はキャッと驚き、思わず清光に抱き付いた。
チュウと鼠が通り過ぎた。
「大丈夫?」
「え、ええ。ごめんなさい。」
紅葉は顔を赤らめ、清光から離れた
「なんだよ。たかが鼠たろ?そんなに驚く事かよ。」
恵は不機嫌そうな顔をしながら言った。
「しょうがないじゃない!幽霊かと思ったんだもん!」
「ハッ!幽霊なんているわけねぇじゃん。どうせただの見間違えだよ。」
恵はバカにしたように鼻で笑った。
「何よ!わかんないでしょ!」
「おい。二人とも。よせ。」
清光が呆れたように言うと、恵がキッと清光を睨むんだ。
「なあ。そういやお前親なしらしいな。」
「!」
「おまけに一緒に住んでる奴って相当変わり者って話じゃん。お前も…」
パンっと音が響いた。
紅葉が恵の頬を叩いたのだ。
「なにすんだよ…!」
紅葉の瞳には涙が浮かんでいた。
「あんた、最低よ…!」
清光は紅葉の肩をポンと叩いた。
「清光君。」
「ありがとう。大丈夫だよ。…北嶋君」
「!」
作品名:月影町の怪談 作家名:小野真子