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超絶勇者ブレイブマン その7

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「これでよし、っと。あとは……、猫の写真は載せた方がいいかな?」
 勇気は自室でひとりごちた。捨て猫の元飼い主を探すための張り紙の文面が完成したのである。勇気は満足そうに頷いて、印刷してみた張り紙をポスターのように壁に押し当ててみた。
 ――悪くない感じだ。そう思ったとき、窓からコツコツという音が聞こえてきた。雨でも降ってきたのだろうかとカーテンを捲り、勇気は驚いた。音は雨のせいではなかったのだ。
「ニャー! あーけーるーニャー! 内側から鍵を掛けるなんて卑怯者のすることニャー!」
「現れたな、地獄の、――って何やってんの愛ちゃん!? ここ2階だよ!?」
 猫語で叫びながら、他人の家の2階の窓をどんどん叩く女子中学生、――あり得ないという言葉では表現し切れないほど、あり得ない存在だ。とりあえず、どこからどう見ても不審者である。勇気は慌てて窓を開けた。
「ほら、危ないから早く中入って!」
「にゃっはっはっは! 敵の侵入を軽々しく許すとは、なんて甘い奴なのニャー!」
「じゃあ、一体どうしろと!? 開けなかったら卑怯者なんだよね!?」
「そう……、貴様は詰んでいたのだ。初めから」
 にやりと笑いながら、愛は窓際のベッドにダイブした。勇気は呆れ顔で呟く。
「で、一体なんだったの今の」
「えーっと、話せば長くなるんだけど、外から見たら勇気くんの部屋に明かりがついてて、その下あたりを見たら物置の横に脚立があったから、立てかけて登った」
「登った意味が全く分からないけど!?」
 ――しかも、全然長い話ではない。
「まあ、私も人間界の奇行種と呼ばれた女だからね。他人に理解されないのもやむなしか」
「なんかかっこつけてるけど、人間界の奇行種って、ただの変人だからね?」
「そうです、私が変なおじさんです」
「おじさんではない!」
 一頻りボケ切ったあと、愛はようやく張り紙の存在に気付いた。
「あれ、何この紙切れ。プリント?」
「何って、学校で話したでしょ。例の張り紙だよ」
「あ、そっか。そういえば、そんな話だったね。――連絡先とか必要なことは書いてあるっぽいけど、なんかインパクト足りないなあ、これ」
 ちなみに、その張り紙には勇気の携帯番号や猫を拾った場所、猫の特徴、そして『この捨て猫を飼っていた元飼い主を探しています。良かったらご連絡をください』という文章が書いてあった。上半分は、猫の写真を載せるためのスペースである。
「例えば、ここの文章に『なお、元飼い主が見付からなかった場合は、猫は保健所に連れて行こうと思います』とか加えてみたら? そしたら、良心のある人なら絶対名乗り出るよ」
「うーん、でも、それって嘘だよね。それに、だったらなんで他の飼い主を探さないんだって話になりそうだよ」
「勇気くんは真面目だなあ。適当なことでも、とりあえず書いておけばいいじゃん」
 うーんと、勇気は悩んだ。愛の言う通りにしたところで、あまり効果があるようにも思えなかった。それよりも素直に真実だけを書いた方が誠実さが伝わると思ったのだ。
「あー、分かった分かった。文面はこのままでいいよ。その代わり、また明日別の手を打とうか」
「別の手って?」
「駅前でチラシみたいにして、張り紙を配るんだよ。電柱とかに貼っておくだけじゃ、気付かない可能性もあるでしょ? 少しでも可能性を高めるために、土日でちょっと頑張ってみようよ」
 確かにその手はあるかもしれないと勇気は思った。愛と更に相談を続け、可恋も暇がありそうならば誘ってみようという話になった。猫の写真は、今日の稽古のあとに愛の家で勇気が撮ることになった。
 問題は明日だ。朝一で張り紙を貼って回って、昼過ぎからは駅前で張り紙配りをしなければならない。――何故か愛は昼過ぎに集合としか言わず、張り紙を貼るのを手伝う気はないようだった。明日も早起きして、一人で頑張らないといけないなと勇気は思った。