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非凡工房

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黄昏


 週末、仕事帰りの夕暮れ。
 九月も半ばを過ぎたが、まだ蒸し暑く。汗を吸ったシャツとスーツが肌にへばり付く。早く冷房の効いた自宅へ辿り着きたいと思いながらも、足取りは重く。ドロドロに溶けた飴細工の様で、身体を上手く動かすことが出来ない。
「よっこらしょ」
 家路途中の公園で、ベンチに腰を掛ける。少し休憩しよう。
 暑さも気にせず元気に走り回る子供達、それを見守りながら談笑する母親、散歩を楽しむ老夫婦が目に映る。
 額から滲み出た汗が、頬をつたう。今日は夕日が一段と眩しい気がする。時刻は午後六時過ぎ。日が長くなったものだ。先ほど買った冷たいドリンクで喉を潤す。

ぽた ぽた ぽたっ

 顔から汗が零れ落ちる。暑い。熱い。
 子供達はスローダウンし、母親が大声で名前を呼ぶ。老夫婦はふらふらと覚束ない足取りで、空いたベンチに倒れ込む。
 ドリンクを飲む。ぬるくて不味く、吐き出してしまう。
 地面に倒れる子供達、寄り添うように重なる母親。老夫婦は倒れ込んだまま動かない。
 そして私も……。


『本日、午後六時十四分。世界天体観測機構が急速な太陽の膨張を確認したと発表しました。これにより世界の気温は約三十度上昇し、緊急の対応が必要と――』
作品名:非凡工房 作家名:氷室