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ひづきまよ
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novelistID. 47429
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サキコとおっさんの話10

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■本日やや曇り。少し湿気。

 いつものコンビニの前。
「いや~ん、たぁくんったらぁ~!」
 甘ったるい声が耳に勝手に入ってきて、スマホをぼちぼちしてベンチに座るサキコはつい舌打ちしたくなるような気持ちに陥っていた。出入り口付近に居るカップルらしき男女の二人組。惚気いっぱいの幸せそうなムード満載な雰囲気。
 女は明らかにメイドカフェ的なファッションを意識したレースやリボン一杯の可愛らしい格好をしている。見る分には可愛い。だが、ちょっとふくよかさん。
 男はデレデレしながら女に軽い悪戯を繰り返す。
「まぁみた~ん」
「なぁああにぃい★たぁくぅううん」
 どうでもいいのだがいちゃつくのはせめて家に帰ってからにしてほしい。人目がありすぎるというのに。イライラしている所、おっさんのデカい車が駐車場に入って来た。それを見て、サキコは内心ホッとする。
「おう」
 エンジンを止め、おっさんが車から降りてきた。
「うん」
 早速彼はタバコ自販機でいつもの物を購入。切れてしまって我慢していたらしく、ボタンを押しながら「タバコ、タバコ!」と忙しない動きをしていた。どんだけ禁断症状なんだよ・・・と内心呆れながらサキコは溜息をつく。
「たぁああくん★はいっ、あーん♪」
「おーいしっ」
 入り口でアイスを食わせる女。おっさんはそれを見て、不思議そうな顔をしていた。
 サキコは敢えて見ないようにしている。
「・・・さっきから?ずっといんの?」
「延々二十分はね」
「あの調子なんだ?」
「うん」
 へえ・・・面白れえなーと興味ありげに眺める。どうやら本人らも気付いていて、敢えてわざと見せびらかしている風を装っているようだ。ちらちらとこちらを向いたり、違う方を見てみたりと分かりやすい様子。
 バカップルというやつか、とおっさんは観察している。
 サキコは「うっざ・・・」とペットボトルの水を煽った。
 早くどっか行けよと言わんばかりに。
「たぁくううん、まみたんもアイス食べたいのぉおお」
「食べるぅう?どうしよっかな~」
「欲しいのぉおおお!食べたぁああい」
「しょうがないなー!じゃあ食べさせてあげるうう」
 甘々な様子に耐え兼ね、ついにサキコはベンチから立ち上がった。おっさんは驚き、つい「うおっ」と声を上げる。彼女はおっさんが手にしていたタバコを引ったくり、ビニールを解いて一本引っ張ると、にっこりとおっさんに微笑む。
「おっさぁああああん、タバコ吸うううう??」
 自分でも気持ちが悪い位の甘ったるい声を発した。同時にぞわぞわと悪寒が走り、鳥肌が湧いてくる。おっさんは顔を引き攣らせ、サキコを見下ろした。
 な、な、何なの!と後ずさる。
 サキコは例のカップルをちらちらと見ながら、「タバコ吸わせてあげるぅうう」と一本突き出す。おっさんはそれを受け取った。
「火つけたげるぅうう!」
「いや、大丈夫それはまじで」
 目が血走っているように見えて、おっさんは恐怖を覚えてしまう。
 完全に罪を犯しそうな顔だ。
「タバコおいしぃいいいいいい???おっさあああん、うめぇだろおおおお??」
 言いながら吐きそうになった。限界が来て、彼女はあのカップルに振り返る。
 どうやら自分達の揶揄をされている事に気付いたらしく、恥ずかしくなったらしい。目を合わせるや即座にその場から退散してしまう。
 退散した後、サキコは敷地内の隅に駆け寄り、慣れない事をしたせいなのか「うぉおおおおえええっ」と声を上げていた。

 時刻は二十時前を差し、虫の音が聞こえていた。