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宇宙を救え!高校生!!

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第3話 ちょっと、難しいお願い



ちょっと、難しいお願い

「ちょっと待ってよ。もう少し分かるように話して欲しいんだけど。電子生命体ってなに、五億四千年前に生まれた君が、どうして今ここに居るの、それから僕らの今置かれている状況を教えてくれないかな」

 興奮を抑えながら、精一杯頭を整理して、僕はハルに尋ねた。

「ハイ。マスター。ご説明します」
 ハルは、じっと僕の目を見つめると説明を始めた。
「電子生命体と有機生命体。今は別々になってしまった二つの生命体は、元々はこの光の宇宙で誕生した『光の生命体』と呼ばれる同じ一つの生命体でした」
 いきなり衝撃的な話だった。


「光の生命体の起源は約百三十億年前になると言われています。四重螺旋の遺伝子構造を持つ生命体として、この光の宇宙で発展を遂げてきました」

 中央にある球体に、四つの螺旋が複雑に絡み合う、今まで見た事のない遺伝子の模型が映し出された。

「この宇宙で繁栄を遂げた光の生命体でしたが、今からおよそ百億年前、事態は急変します。今、私たちが暮らすこの光の宇宙の隣には、もう一つ、全く性質の違う宇宙である闇の宇宙が存在することが分かったのです」

 球体内の映像が、二つの宇宙の映像に変わった。

「二つの宇宙は、ビッグバンにより誕生した時から『始まりの特異点』でつながっている、双子の関係を持った宇宙だったのです。しかし、双子でありながらその性質は真逆で、私たちの宇宙が光のエネルギーによって成り立っているのに対し、闇の宇宙は暗黒エネルギーによって成り立っていました。そして、ある日突然、その闇の宇宙の住人、つまり闇の生命体が、私たち光の宇宙への侵略を始めたのです」

 球体には戦闘イメージが映し出される。

「光の宇宙の勢力は必死に抵抗を試みましたが、ついに約三十億年間続いた戦いに敗れてしまったのです。その後、闇の宇宙による侵略は一層進み、彼らが生きるために必要な、暗黒エネルギーの流入が『始まりの特異点』を経由して行われるようになります。暗黒エネルギーの流入は年を追うごとに勢いを増し、今もなお私たちの宇宙から光のエネルギーを奪い続けているのです」

 ハルの表情が曇る。

「このままでは、あと数億年でこの美しい光の宇宙も、完全に闇の宇宙となってしまうでしょう。そしてその闇の宇宙では私たち、光の宇宙の生命体は生きられないのです」

 球体の光の宇宙から、星の光が消えると、真っ黒になった。

「やがて、闇の生命体との戦いに敗れた光の生命体は抵抗する力を抑えるため、闇の生命体によって二つの生命体に分離されました。そのとき誕生したのが、私たち電子生命体とあなた方有機生命体なのです」

「電子なのに生命体・・・・・ってことは、僕らと同じように生きてるってこと?」
 話の腰を折ってしまうが、思わず質問してしまった

「ハイ。生きています。ただし私たちに有機生命体のような体は無く、エネルギーの塊のような物です。私の今のこの体は皆さんとコミュニケーションを取るための、ただのインターフェイス、仮の入れ物として一時的に存在しているだけなのです。よって肉体が滅ぶ事によっての死ぬという概念は私たちには有りません。電子生命体の命は、融合と分離によって増減を繰り返しながらも常に存在し続けるのです」

「二つの生命体に分離された時に、元々の四重螺旋構造の遺伝子が、二重螺旋構造になってしまったという事なのかしら?」
 学年成績トップの莉子が質問する。

「ハイ。そのとおりです。そして四重螺旋構造の遺伝子が、二重螺旋の遺伝子として二分される時に、光の生命体の持っていた元々の能力も二分されました」
 ハルは、莉子を見ながら答える。
「電子生命体には記憶と計算の能力が、有機生命体には決断と実行の能力のみが、それぞれ残されたのです」

「なるほどー、それでかー」
 記憶と計算能力が無いと自負している、僕と隼人は思わず目を合わせて頷きあった。

「それでも、過去の記憶を持つ私たち電子生命体は、闇の生命体から脅威とみなされ、執拗な攻撃に曝され続けてきました。そのため、僅かに残された私たち電子生命体は、闇の生命体から逃れるように、宇宙のあちこちに潜伏したのです。いつか失われた力を取り戻し、反撃する事を夢見て」

 中央にある球体から数個の光の点が現れて、宇宙に拡散して行った。

「そしてそれは実現しました。素晴らしい事に、あなた方有機生命体は自身の欠如している記憶と計算能力を補うべく、外部記憶演算装置(コンピューター)を作り出して自らの欠点を補い、ついに私たち電子生命体の潜む場所にまでたどり着くことが出来たのです」

「私たちが自身の足でここへ来るのを、待ってたってことかしら」

「ハイ。そのとおりです。有機生命体が進化し、知性を発達させて、我々とコミュニケーションをと取れるレベルに成長するのを待っていました」

「でもさ、僕ら以外にもっと大勢の人と接触する機会はあったでしょ。なんでオレらなの?」
 まるで友達に質問するかのように隼人が尋ねた。

「有機生命体遺伝子認証端末の『スカラベ』に選ばれたからです」

作品名:宇宙を救え!高校生!! 作家名:葦藻浮