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宇宙を救え!高校生!!

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第2話 謎の美少女現る



「痛っ!」
 ブーツの留め具が、さっきのダイモスの追突事故で少し破損していたようだ。
 金属の尖った部分で人差し指を切ってしまった。

 じわり、指先に血が滲むと、鈍い痛みが走った。

「大和、大丈夫か?」
 こんな時に浩二は一番優しい。

「あっ、大丈夫。今日はホントついてないわー」

「それくらい、ツバつけとけばすぐに治るわよ」
 莉子の心ない発言は無視をして、僕はブーツを脱ぐ作業を続けた。

 あと少しで脱げる、僕は踵の近くを強く握って一気にブーツを脱ごうと力を入れた。(『それ』には触らないように)
 そのとき、指先の傷口に圧力がかかってしまい、滲んでいた血が雫となって、ブーツを伝うと『それ』にポッリと垂れてしまったのだ。


 その瞬間だった。僕の頭の奥ではっきりと声が聞こえた。


『起動』と。


 閃光が僕を中心に広って、周囲総てを飲み込んむと、次に暗闇が総てを覆った。
 強い渦の中に投げ出された感覚は残っているが、どうやらそのまま気を失ってしまったらしい。


「・・・・・ここは・・・・・どこなの?」


 最初に意識を取り戻した莉子が口を開いた。

「ねえ! ねえ! 大和、浩二、隼人起きて!」
 と三人を起こしにかかる。

「う、うーん・・・・・・」
 唸り声と共に三人が目を覚す。

 気が付くと僕らはコックピット? の中にいた。

 コックピット? と思ったのは、計器類のような物が沢山見えたからで、実際には違うのかもしれない。
 なぜならそこに並ぶ計器の数々は今までに見たことのない物ばかりであったからだ。ただ、なんとなく。計器ではないかと・・・・・そんな気がしただけなのだ。

 部屋全体は直径25メートル程の球体で、更にその中央にも小さな球体が浮かんでいた。その球体の中には数多くの銀河が、まるでホログラムのように浮かんで見えていた。

(これって宇宙の地図なのか?)

 計器かと僕が思った物は、球体内部のあらゆる壁面を埋め尽くしていて、未知の記号で表わされているそれらの計器が、いったい何を示しているのか、僕には到底理解できなかった。
 そして中央の宇宙の地図? らしき物を中心に同心円を描いて椅子が七脚並んでいた。

 僕ら四人はその椅子の床に後方に横たわっていたのである。

「なんだここは? 映画のセットか何かなのか・・・」
 浩二が呟く。

「えっ、でもオレたち遺跡にいたんじゃなかったっけ?」
 と隼人。記憶が混乱しているようだ。

「いったい、ここはどこなの? 誰か説明して頂戴!」
 上から目線で莉子が言った。

「確か・・・遺跡の周りを歩いてて、僕が右の踵についた変な物体を剥がそうとして、ブーツを脱ぎかけ・・・・その後記憶が途切れた・・・・みんなどう? それで合ってるかな?」

 僕の問いかけに皆一斉に頷く。僕は更に続けた。

「じゃあ、考えられるのは三つかな・・・・一つ目、火山性のガスか何かで気を失って病院に運び込まれた」

「ここが病院だというなら、私達が床の上に眠らされているのは変じゃないかしら」
 と最初の考えを莉子が否定する。

「じゃ二つ目。何者かに眠らされてここへ連れて来られた」

「それって誘拐ってこと? 全員連れ去られるっておかしくない。家が超お金持ちの莉子はともかく、オレらってめちゃめちゃ庶民じゃん。全員眠らせた後で莉子だけ連れ去った方がリスクが少ないしー」

 隼人が珍しくまっとうな意見を言った。

「それじゃ三つ目。全員事故で死亡して、ここは天国の入り口ってのは・・・・・・」

 そう、僕が言いかけると、莉子が近づいてきていきなり僕の右頬に平手打ちをした。力加減はしたのかもしれないが、かなり痛かった。

「痛いなぁー莉子。いきなりなにすんだよ!」

「あら、痛いということは生きてるという証拠よ。良かったじゃない」
 にこりともせず莉子は言い放った。

「それじゃあ、一体この状況をどう説明すればいいんだよ・・・・」
 途方に暮れる僕の脳裏に、意識を失いかけた時に聞こえあの言葉が浮かんだ。

「たしか、(起動って・・・)」

 僕がその言葉を呟こうとしたまさにその時、浩二が叫んだ。

「誰かいるぞ!」
 浩二はそう鋭く叫ぶと、七脚ある椅子のうちの一つを指さした。

 そこには見たこともないような『美少女』が座っていたのだ。

 最初からそこにいたのか、いま突然現れたのか、誰もが全く気付かなかった。
 いや、こうしてその存在に気付いた今でさえ、まるでそこにいないのではないかと思えてしまうような・・・・・その『美少女』からは存在感や生命力をまるで感じられなかった。

 まるで椅子の一部のようでさえあった。よく目を凝らして観察しなければ、存在を見逃してしまいそうなその『美少女』は、真っ白なロングドレスを着ていた。いや、白というよりは透明に近いのかもしれない。その、透明感のある白いドレスの下に薄っすら見えている肌も、また透けているかのような透明感があった。

(本当に透けているのかもしれない)

 火星の? しかも何処だか分からない場所にぽっんとひとり、白いロングドレスの美少女が椅子に座っている。という非現実的な現実が僕達を更に混乱させていた。

 肩まで伸ばした、ガラスのような質感を持つ髪の毛の前髪は目の上で切りそろえられ、青く輝く大きな瞳の上には、長くピンと張り出した睫毛が美しく並んでいた。座っているので身長は定かではないが、やや大柄で莉子と一緒くらいか・・・・・・落ち着いた雰囲気のため、僕達より年上に見えるが・・・・・・年齢的には同世代にのかも知れない。

「マス・・・」


 その声は突然どこからともなく聞こえてきた。


「マスター」


 二度目に聞こえたその声は、間違いなく白い少女から発せられていた。
「あなた誰なの? いつからそこに居たのかしら? ここがどこか分かっているなら説明して頂戴!」

 マスターと呼ばれて真っ先に反応したのは莉子だった。

 謎の美少女は椅子から立ち上がると、莉子の横を通り過ぎ、ゆっくりと僕に近づいてきた。

「ちょっとあなた、私を無視するつもり!」

「マスター、ご命令を」

 謎の美少女は、今度は、はっきりと聞こえる声で、僕に向かってそう言ったのである。

 僕はますます頭が混乱してきた。

(マスター? ここは新手のメイド喫茶か何かか? 眠らされてここへ連れ込まれたのか? このあとに法外な金額を請求されるのか?・・・・・。それともここは精神病院で、彼女は患者? 成績が悪くモチベーションも低い僕は、ついに精神病と判断されてここへ収容されたのか? だとすると莉子や浩二が一緒なのはおかしい訳で、隼人は別として・・・・・・)

 などと思いを巡らせながらも、少しでも情報を得ようと謎の白い美少女の観察を続けた。遠目でも美少女だと分かったが、間近で見るとその美しさは一層際立っていた。

 莉子も相当な美人で、その莉子と幼馴染みの僕は美人免疫をたっぷり持っているはずだった。しかし、その僕でさえも彼女の人間離れした美しさには、思わずハッとしてしまう。
作品名:宇宙を救え!高校生!! 作家名:葦藻浮