小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

宇宙を救え!高校生!!

INDEX|21ページ/27ページ|

次のページ前のページ
 

第11話 決断の朝



 普段と何も変わらず、その日の朝はやって来た。

 昨夜は興奮のため、ほとんど眠ることが出来なかったが、不思議と頭はすっきりとしていた。

 いつものように顔を洗い歯を磨き、いつものようにニュースを見ながら朝食を食べた。
 政治家の汚職、株価の上昇、地球の環境問題など、普段と何も変わらないニュースが流れていた。

 だが、僕には分かっていた。

 今日、この日を最後にいつもの自分の日常が一変してしまう事を。
 もう学校へは行けないし、友だちとも二度と会うことは無いだろう。
 昨日やっと帰ってこれた、両親との思い出詰まったこの家とも、たった一日でお別れなのだ。

 それでも、何故か気持ちは落ち着いていた。

「おはよう」
 テーブルの上に置いた、父と母の絵に向かって挨拶をしてみる。

 もう僕に未練は何も無かった。
 元より、父母の他に身寄りの無い僕には失う物も、僕が死んで悲しむ者も誰もいないのだから。

 午前十時三十分。
 両親の絵を宝箱の中へ戻すと、再び鍵をかけた。その鍵を首から下げると、それ以外何も持たずに玄関を出た。

 心地良い天気だった。

 そのままゆっくり桜の木の下まで歩くと立ち止まり、もう二度と忘れる事が無いようにと、しっかり目に焼き付けた。
 そして、ダイモスにまたがりエンジンをかける。
 キューン・・・・
 軽やかなエンジン音が静かな住宅街に鳴り響くと、目的地に向けて走りだした。


 火星の遺跡に到着してから時計を見ると、十二時二十分前だった。
 今日は、交通費を節約してハイウェイを使わず、一般道を走ってきた。
 まぁ、明日から節約も関係なくなるのだし、最後くらいは颯爽とハイウェイを飛ばして到着、でも良かったのだが、時間をかけて名残を惜しみたい気持ちもあったのだ。

「誰もいないか・・・・・」

 遺跡の駐車場にダイモスを停めて、辺りを見回したが、思った通り誰も来ていなかった。

「そりゃそうだよな・・・・みんな家族がいるし、大切な物だって沢山持ってるのに、わざわざそれを捨ててまで来るはずないよな・・・・」


「よしっ、行くか!」
 念のため、十分ほど待って、誰も来ないのを確認してから、僕は一人で地下に向かうエレベーターへ向かって歩き出す。
 残念な気持ちも、暗い気持ちも全く無かった。昨日、ハルに提案をした時から、こうなることは想定していたのだ。

「ヤ・マ・トー!」
 不意に自分の名前が呼ばれた気がして振り返ると。

「お待たせー」
 そこには、ダイモスに乗って勢いよく走ってくる、奴らがいたのだ!

「お、お前ら・・・・・・・」
 呆然と立ち尽くす僕の元へ、ダイモスから降りた浩二、莉子、隼人の三人が駆けつける。

「ごめんなさい。着ていく服に迷っちゃって」
 ヘルメットを脱ぎ、たわわな長い黒髪を揺らしながら莉子が言った。

「オレ達は、待ち合わせしてたんだけど、コイツが遅刻しやがって」
「痛っ!」
 浩二が、隼人の頭をコツンと叩きながら謝罪した。

「さあ、時間が無いわね。急ぎましょ!」
 そう言って、莉子は僕を追い越すと、すたすたと一人で歩き出した。

「ちょ、ちょっとまてよ、莉子!」
 僕は慌てて莉子に呼びかける。

「分かってんのか? 死ぬかもしれないし、もう二度と戻って来れないかも知れないんだぞ」
 手を広げ、莉子の進路を塞ぐように立ちはだかる。

「そんなの分かってるに決まってるでしょ。私たち、ちゃんと自分自身で決めてきたのよ」
 莉子の後ろで、浩二と隼人が相槌を打った。

「だけどさ・・・・・・」
 それでもまだ渋る僕に。

「それに、バカ大和一人じゃ失敗しそうだから、私たちがお目付け役として付いて行ってあげるのよ。感謝しなさい!」
 両手を腰に当てたキメポーズで、莉子が胸を張った。

「お前ら・・・・・・・・・・」

 僕は、熱い物がこみ上げて、目頭からこぼれそうになるのを必死に堪えると。

「ありがとうな・・・・・」

 そうひとこと言うのがやっとだった。


作品名:宇宙を救え!高校生!! 作家名:葦藻浮