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エイユウの話~冬~

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「あたしが来たときがたまたま汚れた時だったかもしれないでしょ!」
 そんなことはありえないと、恋愛に疎いキサカですら解った。好きな子が来たときに部屋がいつもより綺麗というなら常識的だが、唐突とはいえいつもより汚い部屋に入れようとは死んでも思うまい。キサカは彼女の隣まで歩いていくと、一番近くにあった本棚を勢いよく倒した。アウリーが吃驚してラジィの後ろに隠れる。それにつられて、彼女はキサカに向かって叫んだ。
「暴れたところでキースが戻ってくるわけじゃないじゃない!」
 事実を言ったラジィに対し、頭に血が上っているキサカは、振り回していた机と本棚を彼女に投げつけた。彼女はおびえるアウリーに大丈夫と告げてから、木鏡を触る。
 ガンと鈍い音がしてから、二つは粉々に砕けた。ラジィの召喚したメーラシエラがそうしたのである。
 水を使ったとはいえ重いものを投げたキサカは、荒く肩で息をしていた。腕力でなくても、魔力は体力を消耗する。ラジィはメーラシエラにアウリーをまかせ、彼の前に行って覗き込んだ。興奮しきっているキサカは、攻撃的にぎらつく黄色を彼女に向ける。彼女は何とか言葉を搾り出した。
作品名:エイユウの話~冬~ 作家名:神田 諷