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エイユウの話~冬~

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 放課後、キサカはりんごと紅茶を片手に緑樹館の前にいた。寮の門に書かれた看板で最終確認をしてから、中に入っていく。階段で行くつもりだったが、りんごと紅茶が存外重く、エレベーターを使うことにした。
 乗ったエレベーターが四階に着き、扉が開く。
 作りやデザインが統一されている中、寮はそれぞれイメージカラーで色付けされていた。といっても、外装が白というのは決められており、色を意識するのは廊下と扉くらいだ。部屋のじゅうたんも決まっていたが、生徒色に染められた場所ではそう目立たない。
 陽灯館が赤色なのに対して、緑樹館はその名の通り緑色をしていた。高級感は劣るが、目の保養にはこの上なくふさわしい色である。
 彼は自分の寮で位置を考えながら歩いていく。が、その必要はなかった。
「あ」
 先にそう声を出したのは、キースの部屋の前にいたラジィだった。キースの世話係をしていただけあって、部屋を知っていたらしい。思わず足を止めたキサカに、ラジィの奥にいたアウリーが顔をのぞかせた。
作品名:エイユウの話~冬~ 作家名:神田 諷