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風のごとく駆け抜けて

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いよいよ合宿最終日。
毎年恒例、海までのジョグと打ち上げの日だ。

荷物を永野先生の車に乗せ、私達は海に向けて走り出す。

「梓、きっと驚くわよ。覚悟しなさい」
麻子がいたずらを仕掛けた子供のような顔で梓を見る。

「残念です麻子先輩。海へ向かうのになぜか山を登るのは、葵姉から聞いてますから。あと、麻子先輩が1年生の時に、それについて叫んでたのも知ってますよ」
麻子は梓のセリフを聞いて、心底悔しそうな顔をする。

「そういえば、あずちゃん。色々とあおちゃん先輩から聞いてるみたいだけど、わたし達のことは何か聞いてるのかなぁ」

「え? まぁ色々聞いてはいますけど」
紗耶の質問に梓は苦笑いする。

この苦笑いは、嫌な予感しかしなかった。

「聞きたいですか?」
梓の問いかけに、誰も返事を出来ない。
なんだか、とっても嫌な予感がするのだ。

「よし。まずは聖香のだけ聞いてみてから判断ね」
「何それ麻子! 自分のを聞けば良いでしょ」
「聖香先輩ですか。確か……」
私の意見はまったく無視され、梓が何かを思い出している。

「聖香先輩は……。走ることにすべての能力を費やした人。だから頭脳も胸もちょっと残念。と、葵姉が言ってました。うちじゃないですからね」
梓が必死に自分の言葉では無いことを強調する。

「これは、他の人を聞いちゃだめですし。葵先輩鬼ですし」
紘子の意見にみんなが賛成する。

「聖香の犠牲は無駄にはしないわ。さぁ、勝利のために前進あるのみよ」
麻子は元気よく前を指差し、軽くペースを上げる。

いや、その前に私の犠牲は良いのか。
正直、かなりの大ダメージを受けたのだが。

特に身体的特徴について……。
自分で分かっていても、他人に言われるとダメージは大きい。

「アリス的にはそんなこと無いと思いますよ。澤野さん、勉強もしっかり頑張ってるじゃないですか。部活で湯川さんや佐々木さん達と話しているのを聞いていると分かります」
「アリス。胸については?」
麻子の質問にアリスは気まずそうに黙る。

もういっそのこと、自分ではっきり言ってしまおうか。
どうせ私の胸は恵那ちゃんよりも小さいし、ぺったんこですよって。

そんなことを悩みながらもたんたんと走り、海の家へと到着する。

「合宿、終わったぁ〜!」
「はい……。私も今年は頑張りました!」
「アリスも最初はどうなることかと思いましたが、無事に終わってよかったです!」

麻子、朋恵、アリスが海に向かって大声で叫ぶ。

毎年のことながらこの解放感はなんとも言えない。

私だって叫びたい気持ちでいっぱいだ。
でも、それと同じくらい……。
いやそれ以上に、これで合宿も最後と言う寂しさの方が大きかった。

「なんだか終わってみると寂しいなぁ。せいちゃんは別だけど、わたしとあさちゃん、はるちゃんは、こうやって合宿をやるのは最後なんだよぉ」

紗耶の言う意味が一瞬分からなかったが、自分だけは熊本へ合宿へ行くことを思い出した。

今年の合宿は毎日が充実しており、実業団合宿のことをすっかり忘れていた。

「でも、みんなとこうやってやる合宿は私も最後だよ。やっぱり寂しいよ」
私が言うと紗耶も「そうだね」と頷く。