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能登織 森永
能登織 森永
novelistID. 18299
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ゆめオち

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3,陰




確かに俺が振った木刀は、奴の頭部と思わしき部位をしっかりと捕えていたはずだった。
しかし、感触がない。木刀は振られただけだった。

冷静に考えれば分かる事だが、影は物質ではない。
物理攻撃が通用するはずがなかった。
何を恨めばいい?奴か、木刀か、そんなことに気がつかなかった俺自身か。

『ムダダゼ?』
声。何処からだ?奴しかいない。
その声は、空気を震わしはしなかった。奴には口がない。
『バカカテメェ?ドウセシヌンダカラソンナモンステナ。』
無論死ぬわけにはいかない。生きたいとは思わなくとも、死にたいとも思ってはいなかった。
でも俺は、もう一度斬りつけようとはしなかった。理性が重くて木刀が上がらない。

ここは時間を稼ごう。
「な、何でこのおっさんをこ、殺したんだよ。」
声は震えていた。こう訊いたのは、単純に謎だったからでもあった。
『ニクカッタノサ。オレハオレガニクカッタ。』
俺は俺が憎かった?意味が取れない。
『イマアホミタイニチヲブチマイテシンダノハオレナンダヨ。
コロシテヤリタカッタ。クズドモニムカッテへーコラアタマサゲテルジブンヲヨォ。
ジョウシ?カミサン?ムスメ?ソンナモンクソダ!
ナノニコイツハ、ジブンノタチバマモルタメニ、クソガミホドノカチモネェソンナモンノタメニ、ジブンカラクツジュウノミチヲエランダ!
ミンナシネバイイ!オレダケガイキロ!ホカハシネ!』

・・・だいたい要点はつかめた。
つまり、こいつは文字通りあの男の影なのだ。いや、陰だ。
自分に対する劣等感の具象化。奴の存在はこう説明するしかない。
なぜそうなったのかは、ここが何処なのかという疑問同様、分からない。

『オレハジブンガダイキライダ。イヤ、コンポンテキニニンゲンガキライダ!
テメェモコロシテヤルヨ。コノクズトイッショニジゴクニオチロ!』
ここが地獄ではない事への安堵感。そんなものはあるはずなかった。
奴がこちらへ向かってくる。今度は恐怖しかなかった。

奴を前にして物理法則は意味を持たない。
しかし、突然出現したからには、この木刀には何らかの意味があるに違いない。
辛うじて動く事のできる足で、俺は走った。大きく間隔を作り、奴を見る。
たまごっち辺りだっただろうか。あんな形の幽霊を見たことがあった。
その影は、肉から完全に独立していた。光がないのに、影だけがそこに存在している。
・・・核だ。
肉体という核を失ったのなら、影自体に核ができるはずだ。
そうでもなければ、こんな形でまとまることなどできないだろう。
なら、この影の核が消えれば、こいつも消える、はずだ。
はず、だろう。そう、俺はこの考えに自信が持てない。
しかし、「何もしなければ死ぬ」という事実が、この考えを実行に移せと言っている。そんな気がした。

といっても、核なんて何処にある?
影を凝視する。時間が、適度な間隔を作らせないようにしていた。
よく見ると、影の中央の黒が、周りのそれより濃いことに気づいた。
さっき、男を肉の塊に変えた、あの槍のようなものが出たところだ。
つまり、あの部分のみが、実体として存在している!
俺は走り出していた。今となっては、時間に頼らずとも間隔を縮めることができた。



作品名:ゆめオち 作家名:能登織 森永