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七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
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グランボルカ戦記 5 砂漠と草原の王

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5章 エピローグ





 事件の解決から一週間後、エド達がセロトニアに出立する日の朝、ミセリアはアムルと一緒に城の正門までやってきていた。姉を亡くして、落ち込んでいたミセリアを気遣い、エド達は遠慮したのだが、ミセリアのたっての希望でアムルと一緒に見送りをすることになったのだ。
 来るときと同じ馬を使っているが、エドが連れている女性のこともあり、帰りは馬車での旅となる。そのためアムルは一行にこれでもかと言うほど土産をもたせた。その多くは酒や道中ですぐに食べられる保存食だったが、土産品の中にはアストゥラビ特産の魔鉱石なども含まれていて、アムルの感謝の度合いがどれだけ大きいかということを伺わせた。
「あまり役に立っていないのに、おみやげ沢山もらっちゃってごめんね。」
「はっはっは。気にするな。大体役に立たなかったなどということはないぞ。お主らのお陰で、ミセリアは卑劣な輩の支配から開放されたのだからな。」
「そうです。アムル様の仰るとおり、皆様のお陰で私はこうして生きております。本当に有難うございました。」
「あ・・うん。でもやっぱり、自分で役に立たなかったと思うんだ。ミセリアお姉さんも助けてあげられなかったし。」
「・・・でしたら、今度お会いする時までに、目一杯成長なさってください。エーデルガルド様が成長されて、沢山の人を救えるようになってくだされば、姉もきっと喜んでくれるとおもいます。」
「そっか・・・そうだね。私、頑張るよ。」
「その意気です。それと・・・これ、もし良かったら皆さんで召し上がってください。私が作ったので、お口にあうかどうかわかりませんが。」
 そう言ってミセリアが手に持っていたバスケットをエドに向かって差し出し、エドはにっこりと笑いながらそれを受け取った。
「うん。ありがとう。今日のお昼にみんなで食べるね。」
「はっはっは。ちなみに我が毒見をしたから、ミセリアの作とは言っても安心じゃぞ。」
「もう!アムル様!・・・別に私好きであんなことしてたわけじゃないんですから。」
 ニヤニヤと冗談めかして言ったアムルの言葉に、ミセリアが頬をふくらませる。
「はっはっは。すまんすまん。冗談だ。・・・さて、アレクシス皇子よ。」
「はい、何でしょうかアムル王。」
 アムルが居住まいを正してアレクシスに話かけ、アレクシスもそれを堂々と受けた。
「我は、グランボルカの内政に干渉する気はない。故に、グランボルカ帝国皇帝から救援の要請を受けても軍をだすようなことはしない。だがな。」
 アムルはそこで言葉を切ると、いつもの人懐っこい笑顔を浮かべてアレクシスの両肩に手を置いた。
「友が困っていたら、いつでも助けに馳せ参じるつもりだ。しばらくは国内の平定に奔走することになるかもしれんが、リシエールを取り戻すときには力を貸す。だから絶対に声をかけるのだぞ。」
「ありがとうアムル。時期が来たら甘えさせてもらうよ。」
「それと・・・。」
 アムルはアレクシスの耳元に口を寄せて小声でささやいた。
「エドとクロエを大事にな。」
「・・・・・・。」
 アレクシスの反応を見たアムルはニヤリと笑い、彼の腕を引いて少し離れたところへと移動した。
「やはりな。気づいておるのに、レオに任せようというのは虫が良すぎるぞ。お主の国では、重婚も認められておるのだし、それも視野に入れて一度しっかりと話し合ってみたらどうだ。表向き、いや、実際エドを愛しているのだろうが、お主はクロエにも同じように愛情を持っているのだろう。二人の間に何が合ったかはしらぬが、それも含め三人で話してみよ。人は言葉を使ってコミュニケーションをとる動物だ。話をしてみぬことには、お互い分かり合うことなどできぬぞ。」
「・・・そうだね。何だか、今始めてアムルが大人に見えたよ。」
「何を言っておるか。我はお主よりも3つも歳上なのだぞ。大人にきまっているだろうが。」
「そうだね。すまない。」
「そこで皮肉の一つくらい言ってもいいのだがな。まあ、素直なのがお主の魅力ともいえるからのう。ではまたな。」
「ああ、世話になったな、アムル。」
「エドも、元気でな。」
「うん。アムルもね。」
「ソフィアとレオも次に来る時は子を連れて参れよ。」
「あんたは親戚のおっさんか!」
「子供は連れて来られるかもしれませんけど、女の子だったとしても王様の閨には絶対にやりませんよ。」
「はっはっは。心配無用だソフィア。我は男でも一向に構わんぞ。」
「いや、そこは構えよ。つか、あんたこそ子供つくれよ。俺たちより歳上なんだからさ。」
「はっはっは。ヤブヘビであったな。まあ、中々相性があう女がおらんでな。子を作るとしたらヴォーチェかもしくは・・・」
 アムルはそこで言葉を濁すと、ちらりとミセリアを見た。
「・・・。」
 真っ赤になって俯いたミセリアを見て、一行はなんとなく事態を飲み込んだ。
「ま、まあ。子孫を残すのは義務みたいなものだしね。いいんじゃないかな。」
「アレク、何か挙動不審だよ・・・。」
「そ、そんなことないよ。あははは・・・。じゃ、じゃあアムル。僕らはもうそろそろ行くから。」
「うむ。お主も早く子作りをはじめられるといいな。」
 馬車に乗るためにステップに足をかけようとしていたアレクシスはアムルの言葉を聞いてステップを踏み外して馬車の縁に頭をぶつけた。
「だ、だから僕は・・・。」
「早く平和にせねばな。」
「あ、ああそういう事。そうだね。じゃあ今度こそ。」
 動揺を隠すように咳払いをしながらアレクシスがそう言って馬車に乗り込んだ。
「うむ、4人とも達者でな。クロエにもよろしく伝えておいてくれ。」
「アムルも元気で。」
「まあ、殺したって死なねえような王様だけどな。」
「もう、レオくんってば、失礼でしょ。それじゃ王様、失礼致します。」
 ソフィアが最後に挨拶をした後で、御者席に座ったレオが馬にムチを入れて馬車を発車させた。
 馬で早駆けをするのとは違い、馬車はゆっくりと城門を抜け、街の大通りを走ってゆく。
 アムルとミセリアはゆっくりと小さくなっていく馬車が見えなくなるまで見送った。