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Savior 第一部 救世主と魔女Ⅲ

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「駄目だリゼ! あれに巻き込まれる!」
 追いかけようとするリゼを制し、アルベルトは彼女の手を引いて走り出す。男の目的は気になるが、今は幻の崩壊から逃れなければ。まだ消えていない、渦とは反対側の方向へ進んでいくと、自分達と同じように走る人物の後姿を見つけた。
 あの緑の髪の女性だ。
「こっちだ!」
 アルベルトはそういうと、女性の後を追って走り始めた。彼女の進む方向が安全であると、なんとなく視て分かったからだ。歪み、木の葉に変わっていく森に追われながら、二人は走った。そして、
 白い光の射す空間の裂け目を通り抜けた先には、薄闇に包まれた石造りの部屋があった。どうやらどこかの建物の中らしい。床や壁には所々にヒカリゴケが群生し、ぼんやりとした光で部屋の中を照らしている。遠くからは水が流れる音。どこかから水がしみだしているのだろうか。石の隙間からは赤や白の草花が生え、室内とは思えないほどの植物が生い茂っていた。
 その中に、あの緑の髪の女性が驚いた様子でこちらを見て立っている。よく無事だったと、そう言いたげな表情だ。彼女は幻の森の崩壊に気付いたから足早に立ち去ったのだろうか。何のためにアルベルト達を観察していたのだろう。
「君は何者だ? どうしてここにいる?」
 そうアルベルトが言った瞬間、問われた女性自身とそれを見ていたリゼの二人が表情を変えた。
「誰かいるの?」
 隣に立っていたリゼは、怪訝そうな顔をしてアルベルトとその視線の先を交互に見た。一方、緑の髪の女性は自分以外に誰かいるのかとでもいう風に周りを見回した後、さっきよりもますます驚いた様子で何度も目を瞬かせている。そこでアルベルトはようやく自分が何を視ているのかに気が付いた。
『――あんた、あたしが視えるの?』
 女性は目を丸くしたまま、そう呟いた。