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誰か彼を探して

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4畳半ほどの小さな私の部屋は
ベットに机、PCにギター
お気に入りの物で埋め尽くされている。

デロンギのヒータで、暖められた部屋の
乾燥を防ぐために濡らして
掛けておいたピンクのタオルは
もうカラカラに乾燥していた。

携帯電話の着信音が鳴った。

「どうした?」
「あのさ、外見て!」

さっき別れたばかりの
J.Jからの電話に窓を開けると
真っ黒な空から
真っ白い雪が
ハラハラと舞い降りてきていた。

「わ! 雪だっ!」
「綺麗でしょ? この分だと積もりそうだね」

雪が降り出したぐらいで
電話をかけてくる彼。

まるで自分が雪を降らせているかのように
「綺麗でしょ」と言ってみせ
私に一番最初に知らせたことで
満足がっている、そんな子供のようなJ.Jが
なんとも言えず大好きだった。

「花ちゃん、今夜、抜け出せる?」
「何時?」
「シンデレラの魔法が解ける頃」
「了解!」

その時刻に、私はしょっちゅう自分の部屋から抜け出していた。
猫のように静かに歩いても
ミシミシと音を立てる木の板のベランダ伝いに
トタン屋根に乗り移り
父の愛車の屋根へ飛び移る
そのあと地面へジャンプで着地。

持ってきたスニーカーをつっかけて
家の角まで全速力で駆け抜けると
J.Jが待っている。
まだ話し声は立ててはいけない。
もう一つ先の角まで手をつないで
全速力で駆け抜ける。
そこまで行くと、私たちは笑いがこみ上げ
我慢できずに大声で笑った。

夜の中。
いつも笑った。

街灯が映る、J.Jの瞳はキラキラ輝いて私はその度、彼の瞳に吸い込まれた。

作品名:誰か彼を探して 作家名:momo