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愛玩動物(仮題)

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私は普段から緊急用に「国外退避用ポーチ」を用意していた。
その中には、パスポートとSIMフリーの携帯、数カ国のSIMカード、各国の友人の連絡先、円に換金してもちょっとのお小遣いくらいにはなる数カ国の紙幣やコインが入っている。

忌まわしい家を出る時に持って行ったのはこのポーチと数枚の下着だけだった。

夫にアドレス帳を消去されてしまった私には、電話連絡が取れる友達が海外にしかいないことになってしまっていたのだ。

実家に帰った私はすぐに台湾の友人に連絡をした。
何語で話していたのかは忘れたが「おいでよ。」と、軽く言うのであっさりと行くことにしてしまった。

例え友達の家に泊まらせてもらうとしても、往復券だけを買い求めるよりも、ホテル付きの格安ツアーを利用したほうがなんだかんだで断然安上がりだと思っている。

私はツアーをすぐに予約して、旅程表とバウチャーが届くのを待っていたけれども、待てどもなかなか来ないので、旅行会社に連絡したら、もうすでに送ったと言う。

念のため、どこに送ったのか聞いてみると、手違いで夫と住んでいた家に送ってしまったという。
何度も詫びられたが、取り返しは付かない。
私の旅程は夫の知るところとなってしまったのだ。

訴え損になることが多いという理由から、身内に対して「被害届」を出すのは意外と難しい。
あとあと逆恨みされてかえって痛い思いをすることが非常に多いからだそうだ。

それを過去の経験から知っていた私は、逃げてきたその足で警察に駆け込み、夫の暴力の「相談」という名目の報告をしていたから、羽田で手厚い警護を受けることができたのだ。

「相談」という形でも警察署に記録を残してもらって、外傷がある場合には写真を撮ってもらうといい。
さらに、それを記録に残してもらうように念を押すとベストだ。

記録は、さかのぼって二年は自分の個人情報の開示請求ができる。

私は二年で四回110番をかけていて、うち二回だけ警察署に駆け込めたけれども、110番の履歴は一件も残っておらず、警察署に駆け込めた履歴だけしか自分で取り出すことはできなかった。
作品名:愛玩動物(仮題) 作家名:shino