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放課後シリーズ

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 そして今年は個人戦一位(=森野)、二位(=上芝)、団体戦一位であっさり地区予選を突破し、関東大会に進むことになった。インターハイも夢ではなくなってきている。
「上芝先輩」
 小橋は前を行く上芝に声をかけた。振り返った彼の顔に眼鏡はなく、別人のように見えた。
 上芝は近眼の人間がしがちな、目を細めて物を見る表情を浮かべる。
「何や?」
 同じ部の一年生だと見てとると、前に向き直ってスタスタと歩みを進めた。小橋は構わず後ろについた。
「高橋先輩に見張っとけって言われました」
「眼鏡のスペア、取りに行くだけやぞ?」
「でもレク(レクリエーション)・ルーム、あっちですけど?」
 進む方向とは反対に伸びる廊下を差す。その先には関東大会前のミニ合宿中に寝泊りするレクリエーション・ルームがあった。部員の荷物はそこだ。
 上芝が苦笑した。「ご苦労さんやな」と言い添えて。
 この弓道部救世主の現二年生コンビは、創部史上、最強であると同時に問題児でもあった。森野はとにかく大の練習嫌いで、隙あらばサボる算段ばかりして姿を消す。部活中、道場に縛り付けておくのは至難の業だった。上芝は面倒くさがり屋で、気が乗らないと練習に身を入れない。集中力の持続時間が短く、練習メニューを平気で無視する。森野兄がいた頃は、当時の三年生が総出で監視していたが、彼らが卒業していくとそれもままならない。それで考え出されたのが、一年生に見張らせると言うものだった。
 白羽の矢が立ったのは、小橋と杉浦である。小橋は上芝に、杉浦は森野に弓道部へ勧誘されたと言う、ただそれだけの理由だった。
「そない怖い顔せんでも、ちょっと休憩するだけやんか?」
「まだ正規の休憩時間じゃないッスよ。それに先輩、今日は五十射も引いてないじゃないですか? 関東大会のメンバーは百引くように言われてるでしょう? もう夕方ですよ」
「素引きなら夜でも出来る。自分、おかんみたいやな?」
 渡り廊下から校舎に入る。上芝が学生食堂に向かっているのがわかった。本当に休憩のつもりなのかも知れない。それでも見張れと言われたからには、小橋も同行するしかなかった。副主将の指示は一年生には絶対だ。
作品名:放課後シリーズ 作家名:紙森けい