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放課後シリーズ

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 新入部員は弓を持つのも、弓道を見るのも初めての素人ばかり。運動神経だけはそこそこあり、仕込めば何とかなりそうな森野が第一候補だったが、やる気まるでなしのサボり魔で、部活時間を全うしたことがない。
 そんな頭の痛い状況下で、四人目が入部してきた。明日から六月と言うかなり外した時期に。父親の急な転勤で、入学が決まっていた大阪の高校から遥明に編入してきたのだ。ありがたいことに、弓道経験者だった。
「上芝って経験者なんだろ? 俺が抜けたって、あいつが何とかしてくれるって。だか…」
「ぐだぐだ言ってないで、さっさと着替えろ」
 新入部員の上芝知己は、中学の時から町の弓道場に通っていたとかで、基礎はしっかり出来ていた。また彼の同門で先輩として指導したのが、中学の頃から全国区で、二年生でありながら今年のインターハイ個人優勝間違いないと目される倉橋尚孝なのである。
「皓、おまえもやれば出来るはずだ。上芝の射を見習って、本腰入れろよ。まだあいつが引くの、見てないだろ?」
 だらだらと着替えに時間をかける森野に、兄が言った。
「興味ねぇもん」
 弓道に限らず部活には興味がなかった。先輩・後輩の関係は煩わしいし、自由な時間を削られる。他の何よりも部活を優先している兄の姿を見ると、「他にすることないのか」と突っ込みたくなった。森野自身に「したい何か」があるわけではないので、口にこそ出さないが――言ったら倍返しで返ってくるのはわかっていた。
「それに、弓道なんて向いてねぇよ。覚えること、多すぎ」
 ルールはもちろん、道場内での作法や用具の取り扱いも、森野の基準から言えば煩雑だ。弓道着だって、なぜもっと機能的なユニフォームじゃないのかと思う。着るのも畳むのも、面倒くさいことこの上ない。
「おまえは覚えなさ過ぎる。せめて三年間だけでも鍛えられとけ」
 着替え終わった森野の襟元の緩みを直しながら、兄はすべての意見を却下した。



 
 主将である兄に見張られながら、ストレッチや素引きなどの基礎練習を終えた森野は、記録表を付けると言う名目で弓道場の隅に座らされた。
作品名:放課後シリーズ 作家名:紙森けい