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超絶勇者ブレイブマン その4

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 翌朝。滝登(たきのぼり)中学校、2年C組の教室。昼休み前の歴史の授業に退屈し、居眠りをしている男子生徒がそこにはいた。彼の名前は、星野希望(ほしのきぼう)。頭の悪いお調子者だが、明るい性格のためクラスの人気者である。
 希望の背中を勇気がシャーペンの蓋側で小突く。中学の入学式のとき、希望に馴れ馴れしく話しかけられてから、彼の居眠りを注意をするのが勇気の日常となった。
「おい、希望。起きろよ、先生に叱られるぞ」
「いいじゃん、叱られれば」
 真面目に聞いてない希望くんが悪い、――と言いたげに溜息交じりで呟いたのは愛である。愛の席は勇気の左隣、希望の席は勇気の前である。
 穏やかな表情で彼らの様子を窺う少女、河合可恋(かわいかれん)は愛の左隣の席に座っていた。名前の通り可愛くて可憐な彼女は、勇気や愛とは小学1年生の頃からの幼馴染であり、ヒーローごっこに付き合うこともよくあった。彼女はヒロイン役だったのだ。
「えー、こうして関ヶ原の戦いに勝った徳川家康は1603年に征夷大将軍の座について――」
 年配の男性である社会の先生が希望の頭を教科書の角でごつんと叩き、希望は飛び起きた。
「戦国の世は終わり、江戸幕府が成立。この阿呆たれのように、誰もが安心して居眠りできる時代が幕を開けようとしていました」
 痛い痛いと頭を押さえる希望の姿を見て、クラス中で笑いが起きた。そのとき、ちょうど授業終了を知らせるチャイムがキンコンカンと鳴った。
「まあ、とは言え、江戸時代初期はまだまだ動乱の時代。それについては次の授業でお話しましょう。日直の河合さん、号令をお願いします」
「起立、――礼。ありがとうございました」
 控えめな可恋の号令に合わせ、クラス中の生徒が礼をした。
「さあ、昼休みの時間だニャー! ブレイブマン、弁当を持って屋上に行くのニャ! そこが貴様の墓場となるニャ!」
 愛はまるで爪を立てるかのように、垂直に右腕を折った。勇気は威勢よく応えた。
「いいだろう。しかし、そう簡単に思惑通りになると思うなよ、地獄のミャーコ!」
「……毎度のことだけど、授業中の真面目さはどこに行ったのかと思うな」
 授業中とは違い、今度は呆れるのは希望の方であった。可恋も小さく苦笑いをするだけであった。
 そして、4人は屋上へ。昼休みはいつも一緒に弁当を食べる。最初は勇気と愛と可恋の3人だけだったのだが、いつの間にか希望も来るようになっていた。
「しかし、戸辺の野郎。何も角でぶつことねえだろうになあ」
 希望は弁当の包みを広げながらぶつくさと呟く。戸辺というのは、さっきの社会の先生のことである。
「そりゃお前、自業自得だろうが。廊下に立たされるとかじゃないだけマシだと思うぞ」
「うんうん、勇気くんの言う通り。私だったら脳天にかかと落とししてるね」
 可恋は黙っているが、こくこくと頷いている。
「かぁー、俺の味方は一人もいねえのか。つれえー、孤独の戦士はつれえわー」
「何が孤独の戦士さ! 戦死しろ! それにね、希望くん。歴史の授業ってドラマがあって結構面白いんだよ。例えばね、歴史を紐解くと、いろんなライバル関係が見えてくるでしょ? 紫式部と清少納言、武田信玄と上杉謙信、宮本武蔵と佐々木小次郎――、彼らのように互いに互いを鍛え合うライバル関係、これに萌えないなんて人生損してる!」
「……愛ちゃん、熱弁の方向がちょっとずれてない? というか、前二組は分かるけど、宮本武蔵と佐々木小次郎を互いに互いを鍛え合う関係と言っちゃうのは違和感あるよ。巌流島の戦いでしか繋がりないでしょ」
「まーまー、そこらへん細かいことは気にしない。脳内妄想で補完できるところだしさー」
 指を振りながら応える愛。真面目なのか適当なのかが分からない。それが彼女の魅力でもあるのだが。
「はいはい、お前が歴オタなのは分かったよ。けど、いいのか? あんまり俺のことを馬鹿にしてると後悔するぞ」
「む。どういう意味さ。希望くんが私の言うことにショックを受けて、屋上から飛び降りても後悔しないよ」
 希望は愛の暴言を無視して、こう言った。
「実はな、俺はオタク女であるお前が大好きであろう、あるものを作ってんだよ。それはガンプラだ! 完成間近だから、学校に持ってきてお前にも見せてやろうと思っていたんだが、お前がそんな態度じゃ見せる気も失せるな。やっぱり家で一人で楽しむことにしよう」
「ああ、お前、それで徹夜して寝不足なのか? やっぱり完全に自業自得だろ」と勇気が突っ込むが、愛はそれどころではなかった。
「ガ、ガンプラって、ザクII!? それともゲルググ!? ベタだけど、シャア専用ザクもいいよね!」
「いや、デスティニーガンダムなんだけどな。そんな古いのじゃねえし、敵のモビルスーツばっかじゃねえか」
「デスティニー! それでも許す! 希望くん、私のお弁当の唐揚げ一個食べていいよ。一個だけならね!」
「別に唐揚げが欲しかったわけでもないが、……まあいいか。もうちょい時間かかるから、気長に待ってろよ」
「しかし、それにしても守備範囲の広いオタクだよね、愛ちゃんって」と勇気が言い、「そうだよね」と可恋が応えた。当の愛は嬉しそうに笑っている。
 そうして、昼休みの時間は過ぎていくのであった。