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希望

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日曜日の朝、玄関のチャイムが鳴った。
そういえば、このチャイムが鳴るなんて とんと久し振りだ。
リビングでベーグルパン齧っていたボクは、口の中に残ったパンを水で飲み込みだ。
此処最近鳴ったのは、………。と思い出すのが難しいほど過去形のことだ。
はて、通販でも頼んでいたかな? などと思い出しながら、玄関へと向かうボクが居る。

「はぁーい、今出まーす」外になど聞こえないほど小さな声で面倒くさそうに呟いた。
滅多に見ることのないドアスコープは、くもっていて役にたたなかったが、人影があるのはわかった。
鍵を外し、「どなたぁ」と隙間を開けた。
ふと見えたスカートらしい布キレに、ボクの気持ちが晴れた。
ドアを開けたそのドアの後ろに立っていたのは、紛れもない キミだった。

ボクは、どんな顔をしてキミを見ている? たぶん凄くだらしない顔をしているのではないだろうか。こんな顔を見て、キミの足が遠ざかりはしないだろうか。なんてことは構わず、キミの笑顔を じっと見つめていた。
空は、晴れ渡っている。暖かな陽射しだ。でもこの暖かさはその所為じゃない。
ボクとキミの間にだけ生まれる心の温もりなんだ。絶対そうだ。
そんなボクの様子が、キミの少し傾げた頭と突き出した唇の顔つきで鏡のように帰って来た。はたっと、ボクは平常心を取り戻しつつ、どれほどかにやけていた顔を整えた。

キミは、ゆっくりお辞儀をしてから ボクをまっすぐみると別人のような笑みを見せた。

「ただいま」

(良かった。『こんにちは』なんて他人行儀な挨拶されたら、ボクが用意していた言葉がでないよ)

「おかえり」

ボクは、片足だけつっかけたサンダルに重心をかけて、キミに手招きをした。
逸る気持ちは、ボクの手に伝わり、キミの手首を掴んでドアの中へと導いた。
抱きしめたい……いやまだ駄目だ。キミのきちんとした態度に替わる挨拶をボクもキメなければ、今まで通りの付き合いになってしまうような気がした。
作品名:希望 作家名:甜茶