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D.o.A. ep.44~57

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Ep.52 レオンハート−2−




屈強な海賊たちを先頭に、丈の長い草むらをかきわけて進む。
ヴァリム集落周辺の森林や、エメラルダの地底の森と違い、ひどく歩きづらい。
幾度となくつまずきつつ、したたる汗をぬぐう。
集落の住民であるエルフは、生活の基盤が森にある以上、それなりに歩きやすく処理していたのだと、今ならわかる。
天然のトラップがいたるところで彼らを苦戦させていた。
進めば進むほど、周囲は薄暗くなり、視界の悪さもあいまって不気味さを増していく。

「…暗くなるまでには、たどりつけそう?」
「お嬢のためにも、できるだけ急ぎたいとこやけど…どうやろうなぁ」
泥濘にはまり込んだ足を引っこ抜いて、傍らを歩いていたナジカ青年はため息を吐いた。
「そもそも、キミのほうがこの島については詳しいんやろ?」
「いやー、それがさっぱりなんですわー。こんなとこまで来たん、初めてやし」
ライルの代わりにジャックが応えると、彼はいくばくか驚いた様子を見せた。
「え?! …なにして過ごしてたん、退屈やったやろ。未知の島!冒険するしかないやん」
「はは…」
なにしろこちとら、猛獣に命を狙われているのだ。睡眠は自然と浅くなり、いつ襲いかかってこられるか気が気じゃなかった。
ゆえに、あいつをやっつけようという提案は、いたしかたないものであると思うのだが。
ジャックはそれを、あからさまに嫌がった。ソルという名をつけて、たいそう思い入れを持っていたようだった。

「ソルって、海賊団が信仰してる神なのか?」
不意に気になって、たずねてみた。
「ん、大体ソル神信仰しとるな。船長も、お嬢も、コイツも…オレも」
いって、ジャックの背をパンとたたいた。いい音をたてて彼がうめき声を上げる。
「別に入信せんと仲間に入れんワケやないよ。簡単に言えば土着信仰やね」
明確な教義などはなく、日々生きていることに対する、ささやかな感謝の対象のようなものだと彼は言う。
ソル神は、その力を万物へ宿らせ、あまたのめぐりあわせを導くとされる。
ジャックがこの島に孤独に流れ着いたことも、ライルとティルがこの島に現れたのも、そして、海賊船が彼らのもとに現れたことも。
「出会いを、俺らは“ソル神のお導き”って考える」

ソル神はその神話の断片を残すのみで、彼らの故郷になにひとつ戒律や神託などを与えない。
善悪の定義すらない。
生涯を、明るく希望を持って懸命に生きよ、と。
それだけが教義らしい教義であるそうだ。
「なればこそ海賊行為(こんなコト)も楽しくやっとれるわ、キミもどや?毎日楽しく海洋冒険ライフ」
軽い勧誘にライルは小さくかぶりを振って目を細める。

「そうだ、そんなことより、―――」
「お、見てみてください、あれ!」


作品名:D.o.A. ep.44~57 作家名:har