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D.o.A. ep.44~57

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「なんか、ティルくんとソルは似とるなあ」
最後の一口を平らげ、ごっそーさん、と手を合わせると、ジャックはティルが去っていった方角を見やる。
「あ、レオンハートか。でも、違うんやったら違うて、最初に言うたらええやんなあ。
俺1ヶ月、ずっとソルって思てたのに、今更ちゃいます言われても違和感しかないわー」
「…あいつ、やっぱり俺を嫌ってるらしい」
「おんなじレオって名前やのになー」

人語をあやつる金色の獣は、正しい意味での獣ではなく、獣をかたどった、何かだ。
魔物は無性生殖の生物なので、レオンハートが魔物ならば、この島に同種が何体もいなければおかしい。
よって、魔物である可能性は低いが、ならなんなのかと問われると、わからないとしか言いようがなかった。
なんにせよ、いつまた飛びかかって来られるかと思うと、特にライルは常に気が抜けないし、眠りも浅かった。
やはり、ここでの安全で快適な生活のため、レオンハートは駆除するより他ないのでは、という結論に、ライルの中では既にいたっている。
そして口に出すごと、ジャックが猛烈に反対するので、実行にはうつされていない。
いわく、もう反省したんやろう、と。
たしかにあの夜、レオンハートを負傷させ、その後今まで襲われたことはない。
だが恐らくは、負傷して満足に動けないでいるのだろう。
快復すれば、再び元気に命を狙ってくるに違いない。
レオンハートは去り際、はっきりライルを拒絶し、お前は死ぬべきモノだと言い放ったのである。

「ライルくんはええ奴で、メシもめっちゃ旨いって、アイツもわかってくれたらええのにね」
「獣に人間の味付けは合わんだろ」
ずず、とライルもスープを飲み干した。
我ながら悪くないと自画自賛するも、これが獣にもうける味とは考えにくい。
「仲良うやってほしいんよ。これ嫁と姑にはさまれた夫の心地?」
「さっきからあんた、喩えが家族ばっかりだな」
食後の果実に歯を立てる。

「あはは、言われたら確かにそやな。永住するつもりやったけど…やっぱり恋しいんかな」
あっけらかんと陽気なばかりであった眼差しに、不意に寂しさがにじんだ。
「家族で船旅してたのか?」
「んにゃ。でも、家族みたいなカンジやったな。俺、孤児やったし、余計そう思うんかも。
船長もお嬢も、基本的に来るもん拒まんから、いつの間にか大所帯でな、ホンマ毎日にぎやかで楽しかった」
「…なら、今きっとあんたのこと、必死になって探してる最中だろうな」
「……やったら嬉しいなあ」
はぐれた仲間を思い出しているのか、ふくくと幸せそうに頬を緩ませている。

「ところで、あんた、海に落ちるまで何やってたんだ?」
「………」

表情を固まらせてジャックは沈黙する。
首を傾げて、意味がわかりにくかったか、と、言い回しを変えて訊ねてみるが、彼の返答はかわいた笑いのみだ。
「バカにしてんのか?」
「いやいや滅相もない、ただ…その。あんま、世間一般では褒められたことやないかなあ、と…」
「なんだ?殺し屋…には、見えないな」
「好きでやってたし、夢もあるけど、それをわかってもらえるかはまた別の話やし」
「別にいいだろう。好きでやってるんなら。犯罪じゃなきゃさ」
「……まあ、多分もう戻れるコトはないし、俺は未来だけ見つめとるよ。3人で一生たのしい無人島ライフを」
「あんたがそんなつもりだと幸運が避けていきそうだからやめてくれ」
すまんすまん、と軽々しい謝罪にため息をひとつつくと、ライルは立ち上がって背を伸ばす。

「今日も行くん?」
「ああ」

そして、昼食をとった後は、夕暮れまでリノンを探していた。
とはいえ、ジャックの足で、半日そこそこで一周できる程度の面積しかない島を、もうずいぶん捜し歩いている。
そもそもこの島にはいないのではないか、という疑念は、何度もよぎった。
しかし、誰も「リノンはこの島にはいない」と確たる答えをくれぬ以上、船の件と同じく希望を捨てるわけにはいかない。
それに、もしこの島にいないとしたら、もはやお手上げである。
恐らく、この先もう二度と会えまい。
そんなことを、考えるのさえ恐ろしくて、不安を振り切るように駆け出した。







そして、今日もまた、何の成果もなく、時間を費やした。

夕闇は徐々に光を失っていき、もうすぐ夜になる。
今日は、いつもより長い時間探した。
どんなものさえ見逃すまいと、必死になって駆けずり回った。
そんな想いもむなしく、リノンどころか、この島には3人以外の人間の痕跡さえない。

「………」

―――もう二度と、会えないのか。

彼女は、いつだってそばにいてくれた。
声を、笑顔を、怒った顔を、泣いた顔を、風に揺れる緑色を思い出す。
自ら危険に突っこんで行くようなライルを、何の得もありはしないのに追いかけてきて、いつだって心配してくれた。
そして、たびたびライルが決めたことに反対した。
今思えば、なぜそれを、わずかでも余計なお世話だと、鬱陶しいと感じてしまっていたのだろう。
一度でも、ありがとう、と伝えておけばよかった。
視界が、熱い水でじわりとにじんだ。


作品名:D.o.A. ep.44~57 作家名:har