小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

鬼蜘蛛女郎

INDEX|7ページ/8ページ|

次のページ前のページ
 

襖の向こう側から現れ出でた其れは、形容しがたい姿をしていた。
ねーはん……そう呼ぶからには、おそらくきっと女なのだろう。しかし其の化け物は、性を探ることすら、難しかった。
「コレ……うちのねーはんや。どうか、旦那はん、うちにしたみたいに、優しゅうしたってや」
ずるずる……ずるずる……と体を引きずって近づいて来る其れは、人の形に生まれようとしたのだろう。しかし、其れは生まれて来る途中で、地獄の釜にでも入れられた様に、不自然に崩れた姿をしていた。
顔面は崩れ、髪があるべき場所からは、無数の小さな手が生えて、誘う様に手招きしている。
四肢があるべき場所には何もなく、まるでダルマだった。
しかし其れがずるずると這いよって来れるのは、首から手が生えていて、それで体を床を押しているからなのである。
「良かったなぁ、ねーはん。その旦那はんは優し人や。きっときっと、ねーはんの事も幸せにしてくれはるよ」
紗江の言葉に感応するかの様に、其れは低い……獣の咆哮の様な声を立てて、歓喜した。
崩れた顔面を嬉しそうに歪めながら、化け物は陽助に這いずってくる。
陽助は、何とか逃げ出そうと体を動かしたが、しかしやはり思い通りに動かすことが出来ずに、じたばたと床の上で転げまわる事しか出来なかった。
其れはきっと、蜘蛛の巣に捕らわれた蝶に似ている。
ゆっくりと這いよる蜘蛛は、怖気を誘うほどに恐ろしく、捕らわれた蝶は美しい羽をばたつかせながら、ゆっくりと命を削られてゆくのである……。
 
作品名:鬼蜘蛛女郎 作家名:逢坂愛発