言の寺
亜音速ガール
亜音速で廊下を駆け抜ける君
僕に恋する瞬間も与えず
君は走り抜けていった
僕は机に腰掛けて
君が揺らす窓ガラスの振動を
ただ静かに眺めていた
君はいつでもロケットスタート
そして毎日この廊下を
亜マッハで駆け抜けていく
僕は恋の手前で踏みとどまって
君の残像に心を寄せる
ねぇ亜音速のキミ
どこに向かうの？
何から逃げるの？
君に聞きたいんだ
君には好きな人がいるのかい？
好きな男性のタイプは？
好きな食べ物は？
好きな色は？
……僕みたいな男は？
僕の声
君に届くだろうか？
亜音速の君に
届くだろうか？
音に並ぶ速さで駆ける
君の17才の疾走に
僕の声は届く？
もし届くとしても
たぶん5000ｋｍくらい先だろうな
それでも構わない
この気持よ音になれ
彼女に追いつく音になれ
光より早い音になれ
彼女の起こすソニックムーブに
かき消されないよう
力強く響く音になれ
とびきり鈍足な僕だけど
君への想いなら
音速を超える自信があるよ
次に衝撃が疾走る時
揺れる窓ガラスをこじ開けて
大きな声で言うよ
「君が好きなんだ」