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白き削除屋(デリーター)

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そこは、血生臭さが漂っていた。その原因となっているのは、床一面を真っ赤に染めた男の部下達の亡骸。それらを前に腰を抜かし、立つこともままならず、怯え、竦み、助けてくれと懇願する男。
「わ、わかった。今回の儲け、全部、全部、お、お前にやるよ。だからっ、その銃を・・・。    やめっ、殺さ・・・・!


               バッ!!!?」
その震える顔に弾丸を打ち込まれた男は奇怪な悲鳴を上げ、撃たれた場所から鮮血が噴き出す以外は、一切の動きをなくした。

まさに血の雨が今降り注いでいる中、その雨を降らした白い影は、その顔についた血を拭うこともせず、ぽつりと呟いた。
「任務完了。」




『今日午前、巫山戯流名組合の組員が、組合所で全員射殺されているのが発見されました。
巫山戯流名組合は、過剰な借金の取立て、強請、カツアゲ、万引きなどにより、度々治安部隊により検挙されていた暴力団組合で、今回の事件は恨みを持った人物の反抗と見て捜査が――――』

「やーれやれ、ついこの間まで平々凡々の毎日かと思いきや、いきなり物騒なニュースが流れるようになったね。」
「そうだね。この間もどこかの暴力団が皆殺しにされていたよね。」
テレビのニュースを前に、不安そうにしているレックと、のほほんとしているルインが話していた。
「まあぶっちゃけ、全滅させられてる場所っていうのが、全部こういったどこよりも安く恨みを買ってるようなところだからねえ。ぶっちゃけ自業自得だよねって感じだけど。然るべき最期を迎えただけっていうかね?」
のほほんとしながらもやけに剣呑なことを言っているルインを、レックが嗜める。
「なにさらりと物騒なことを言っているのさ。」
「でもこれで、助かった人達がいるのもまた事実だよ?執拗な借金の取立てに悩まされて、自殺という選択肢を迫られかけていた人だっていただろうしね。そういう人たちにとっては、この事件は地獄に舞い降りた一筋の光明だったんじゃない?」
そんなルインの、身も蓋もない言い草に、それでもレックは言い返す。
「確かに、あの暴力団が消滅したことで助かった人だっているだろうけどさ、だからといって皆殺しという形で終わらせていいという道理にはならないじゃないか。罪を犯しているのなら、然るべき場所で裁かれるべきでしょう?」
「ま、それが一番の正論だよね。でも世の中そうはうまくいかないから、こんな正義と悪が歪んだ事件が起きるんだろうけどね。
   っと、誰か来た。」
少し辛気臭い話になりかけていた二人の話を打止めてくれるかのように呼び鈴がなった。
玄関に出迎えてみると、カウルとハルカの両名が立っていた。
「おっす。」
「こんにちは。」
「おお、お二人さん揃っていらっしゃい。どした?」
家の中に招き入れようとしたルインだったが、二人は中に入らずにに要件を切り出した。
「いや、なんていうかな。とりあえず住む場所が見つかって大分落ち着くことができたからな、一つお礼に来させてもらったんだよ。」
そう、あのトレジャーハンティングで得た報酬をルインたちと山分けし(というより七人で分けた)、そのお金でこのキブに腰を落ち着けることにした二人は、ルインたちが(正確にはレックとツェリライが)協力し、先日入居先が決まったところなのだ。
「あれまあ律儀にどうも。でもお礼は別に、この前の祝入居パーティ兼歓迎会で十分にしてもらったから別に改めてってする必要はなかったのに。」
ルインはそういうが、二人は照れくさそうに下を向き、申し出た。
「いやまあ、実のところお礼はついででな。少し箪笥やらの調達に付き合ってくれないかと思ってな。」
これで二人の訪問の目的がわかった。
「なるへそ。住む場所が決まったのはいいが、住むのに必要なものがなくて揃えようとしたけど、この町の地理は全く知らないから手伝って欲しいというわけね。」
「・・・はい、そういったところです。」
二人の事情を察したルインは、一番効果的な策を考える。
「よし、わかった。じゃあこの僕が一肌脱ぎますか!


   というわけでレック!付き添いよろしく!!」
「うぇ!?ボク!?いや、いいけど、なんで?」
突然のご指名に驚くレックに、ルインはお決まりの笑顔で告げた。
「だってレック世話好きだし、僕よりもこの町の地理に詳しいじゃん!」
「世話好きに見えてしまうのは誰のせいだとか、さっきルインが一肌脱ぐと言ったのに速攻でボクに振るのはどうかとか色々ツッコミどころはあるけど、
割と最近この町に来たボクよりも町の地理に疎いってどういうことなのさ?」
呆れてものも言えない、といった感じである。
「いいコンビだな。あの二人。」
「そうですね。」
そんな二人を、面白そうに眺めている二人がいた。


「じゃあ行ってくるね。戸締りはよろしく。」
「はいはい、子供じゃないんだから大丈夫ですよっと。いってら〜。二人の愛の巣の作成協力頑張ってね〜。」
ルインの軽口に、ハルカがボンッという音と共に真っ赤になる。
「あ、愛の巣?」
ゴッ!!(カウルがルインを殴った音)
「あいったぁ〜。いきなりひどいじゃないか。」
「何がひどいじゃないかだ。人をロリコン扱いするな。あと、ハルカに変なこと吹き込むな。」
「へいへい、随分と愛していらっしゃることで。」
「・・・今度は電撃付きで行かせてもらうぞ。」
既にその拳には電撃が迸っている。
「ごめんなさい冗談です。いってらっしゃいませお三方。」
「はいはい、行ってきます。」
三人を見送ったルインはダイニングに戻り、コーヒーを淹れる。賞金のごく一部をはたいて購入した本格焙煎式のコーヒーメーカーから香ばしい香りが漂う。
カップに注いだコーヒーに、今日は気分的に甘めでいきたかったので、いつもより多めにミルクと砂糖を入れた。
そうしてやや傾いた陽だまりがさす中、ゆったりと椅子に座り午後のひとときを過ごしていた。



温かいコーヒーと暖かい日差し。温もりしかないはずのこの空間に、ほんの僅か、刺すような冷たい「何か」を感じた。
(!?)
それが何かを探る前に、まずルインの本能が右腕を動かし、顔面をカバーした。
その右腕に焼け付くような痛みを感じる。と同時に、血しぶきが上がった。
「あ痛ったぁ!!!」
だが、痛がっている余裕もない。突然の襲撃者の次の攻撃に備え、刀を構えた。
敵が狙撃手だというのなら外には出ないほうがいい。今外になんて出れば撃ってくださいと言わんばかりである。
次に狙撃が来れば、弾道を予測して相手の場所を割り出せばいい。こっちの間合いに入り込むことができればその瞬間に勝負はついたも同然である。
呼吸を整え、精神を集中させる。銃弾が風を切る音を逃さないよう耳を澄ませる。
一分、五分。時間はゆっくりと進んでいく。その間ルインは微動だにせず、同じ構えを取り続けた。
さらにまた一分、五分と時間は流れていく。
と、何かが動く気配を感じた。
来る!!    ルインは刀を握る手に力を込めた。
だが、ルインの予想に反して来たのは銃弾ではなく、一人の男だった。
いや、格好的に男だろうという推察をしただけで、はっきり言ってパッと見では男には見えない体格だった。