小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ルーズリーフと誕生日

INDEX|1ページ/1ページ|

 
あ~誕生日ケーキだぁ…

「いった!」
 大声を出したあたしにクラス中の視線が集まる。どうやら授業中に寝てた上に夢まで見てたらしい。
「はっ、爆睡かよ」
「…もうちょっと優しく起こしてくれたっていいじゃん」
 小声で隣の席の啓吾に言う。さっきあたしを文字通りたたき起こした張本人だ。
 窓際から2列目、最後列。別に授業で当てられる順番が回ってきたわけでもないらしい。あたしはわざと不機嫌そうな顔をして、頬杖をつく。
「彩」
「なによ」
 話しかけてきた啓吾に、あたしはかわいくない態度。
 すきなひとに寝てるとこ起こされて、照れ隠し。
「ん」
 啓吾はあたしの机の上にルーズリーフの切れ端を置いた。あたしはちょっとだるそうにしながらルーズリーフの切れ端に触れる。
 三つ折りの切れ端が開くたびに音を立てて、あたしはなんだかどきどきする。隣の啓吾を盗み見ると、啓吾は窓の外を眺めていた。
 あ、そういえば今日はきれいな秋晴れの日だ。
「っえぇ!」
 あたしは慌てて口を手で塞ぐ。本日2回目の失態。
「岡田―、ちょっと騒がしいぞー」
 間延びした声で先生があたしを注意した。とっさにあたしは切れ端を手で隠す。教室にはあちこちでクスクスと笑う声が聞こえていた。
 あたしが思わず啓吾を見ると、啓吾は何かを言った。
「ば、か」
 口パクだけど伝わった。
 そんなことしか言えないのかあなたは、
 好きな人に向かって。
「これ、ほんと?」
「……うん」
 啓吾は窓の方を向いたまま言う。
「まじで?」
「うん」
 啓吾は態度を変えない。あたしは黙ってみた。
 すると啓吾はちょっと不安そうな顔をして、あたしの方を見た。
「なんか言えよ」
 振り向いた啓吾の顔は、少し赤くなっているように見えた。
 見るつもりもなかったけどあたしは黒板を眺めて、ふと浮かんだ疑問をぶつける。
「てか、なんで今なの?授業中だし、あたし寝てたじゃん」
 ちょっと悩んで、啓吾は自分の髪をくしゃくしゃと触りながら言う。
「今日、10月14日。彩の誕生日だろ?」
「へー、知ってたんだ」
 あたしの素直な感想に、啓吾は少しむっとする。
「……まぁな。で、今何時?」
「何言って、10時14分?」
 あたしは時計を見直した。というか2度見した。
 でも間違いない、10時14分。
 そんなことを恥ずかしそうに言うなんて……。あたしはわざとにげんなりした表情をつくって啓吾の方を見て、言った。
「恥ずかしいやつ」
 瞬間的に啓吾の表情が変わるのを、あたしは見た。
「はあ?!お前なあ!」
「今度は佐々木かー。次騒いだら外出てもらうぞー」
 再び先生による注意。クラスメイトの何人かはあたしたちの方を見て、すぐに前へ向き直していた。思わず大声を出した啓吾を見て、あたしはにやにやしてやった。

「……ょ」
 啓吾が何かを言ったが、あたしには聞こえなかった。啓吾が何かを言ったかどうかも怪しくて、私は聞き直した。
「何か言った?」
少しうつむいて、右手に持ったシャーペンをくるくると回す、そんな啓吾を窓から差す日差しが照らした。
「好きなんだよ、お前のこと」
 先生の声とシャーペンの音だけが響く教室で、小さくつぶやいたはずの啓吾の声は大きく聞こえた。あたしたちは恥ずかしくなって、お互いに違う方向を向いた。好き、その言葉だけがあたしの胸に何度も響いて、思わず口元が緩んでしまう。
 この授業が終わったら、あたしもちゃんと伝えよう。


 あたしは今日、15歳になりました。