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飛鳥川 葵
飛鳥川 葵
novelistID. 31338
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ゲイカクテル 7章 LISTEN TO YOUR HEART

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ゲイカクテルの取引を二日後に控えた次の日の朝、ホランド郡警察ではオーランド郡警察とノイキルヒ警察の麻薬課との合同捜査会議が開かれた。進行役は殺人課一係係長ハワード・チェイスで、麻薬課の最強コンビ、シャズ・ゴードンとラット・ヴァレンタインも参加した。チェイス係長が会議の開会を告げた。ロンが立ち上がって口を開く。
「まずホランド郡警察からですが、ヤクの売人トーマス・ウォレスとガンマンのリチャード・マークスの銃撃殺傷事件でシルバーブルーの存在を初めて知りました。その後麻薬課と合同捜査をしましたが、ヴェロニカ通りのゲイの間でセックス・ドラッグとして流行っているとしか分かりませんでした。ですから、仲買人、売人は判明しておりません」
 ロンが座ると、今度はオーランド郡の刑事が立ち上がった。
「オーランド郡ですが、シルバーブルーを取り扱う共和国の麻薬王、ジュンク・ポランスキーを逮捕しようと周囲を張っていたところ、ポランスキーは暗殺されてしまいました。犯人はバウンティー・ハンターのミニッツ・サンダース。ホランド郡のマフィア、ロゴス・エルナンデスのお抱えガンマンらしいという情報です。元軍人で軍に照会したところ、元九〇一後方支援部隊大佐としか分かりませんでした。これがミニッツ・サンダースのバウンティー・ハンター登録証のコピーです。皆様にお配りします」
 全員にコピーが渡ると、ホランド郡の刑事達がざわめいた。写真がアレックス・ウィンタースの顔だったからだ。オーランド郡の刑事が不思議そうに尋ねた。
「どうされたのですか」
 ロンが答える。
「いや、確かにこれはホランド郡の人間です。ホランド郡中に知れ渡っている有名人です。ロゴス・エルナンデスのお抱えガンマンではなく、付き合いのあるフリーのガンマンでバウンティー・ハンターでもあります」
「その人について何か情報はありますか」
「軍の機密に触れると困るのですが、本名をアレックス・ウィンタースと言い、ビリー・トマス・シュナイダーと、オール・トレード商会というなんでも屋を営んでいます。バックにロゴスと軍の情報局がついていて、クセのある人物です」
「そうですか。ポランスキーはバウンティー・ハントの対象でしたし、条件に生死問わずとあったので、逮捕するコトはありません。情報ありがとうございます。それでルートですが、子分達を吐かせたところ、仲買人と主要な売人は判明し、今泳がせています。取引場所はまず海上で密輸し、港の魚市場の五番倉庫で仲買人に売っているそうです」
 オーランド郡の刑事が座り、ノイキルヒの刑事が立ち上がる。
「ノイキルヒでは、シルバーブルーは学生の間でソフト・ドラッグとして流行っており、バーやパブ等の酒場で売っています。末端の売人は捕まえましたが、仲買人や主要な売人等の詳しい情報は分かりませんでした。ですので、ルートも判明しておりません」
 ノイキルヒの刑事が座ると、チェイス係長が口を開いた。
「以上がシルバーブルーの現在の情報だ。オーランド郡警察は海上警察と連絡を取り、明日の作戦会議に参加させるように。あと各警察の特別急襲部隊SWATも参加させるようにしてくれ。以上で会議を終了する。何か質問は?……ないようなので、以上、解散」
 刑事達は席を立ち、会議室を出ていった。チェイス係長がロンを呼び止めた。
「なんでしょう、係長」
「またお前は単独捜査をしとるな。相棒をつける。誰がいい?」
「じゃあ、チャック・デービスを」
「クロスの時で気に入ったか。いいだろう。それでお前達は掃討作戦中は連絡係として居残りだ」
「分かりました」
「行っていいぞ」
「失礼します」
 ロンは一礼して会議室を出ていった。その顔は少し思案顔になっていた。アレックスのコトでだ。ミニッツ・サンダースとはどういうコトなのかを聞かねばならない。家に戻ったらアレックスに聞こうと思った。

 昼にロンは家に戻るとアレックスを電話で呼び出した。アレックスが訪れると、ロンはリビングに通した。
「話ってなんだ」
「ジュンク・ポランスキーを殺ったな。ミニッツ・サンダースってなんだよ」
 アレックスは押し黙った。オーランド郡からいつかは情報が来るとは思っていたが、一応軍の機密事項だ。話すわけにはいかない。恐らく今日、オーランド郡警察とノイキルヒ警察との合同捜査会議を開いたのだろう。アレックスはバツが悪かった。
「どうなんだ。話せよ。もうホランド郡警察殺人課一係ではミニッツ・サンダースがアレックスだってバレてるんだ」
 ロンは畳み掛けた。アレックスは困った。会議でバウンティー・ハンター登録証が資料として提出されたのだろう。
「話せよ。もうオーランド郡警察にもノイキルヒ警察にも知られてんだからな。オレが話したんだ」
 ロンはなおも畳み掛けた。アレックスは完全に困り果て、観念した。
「分かった。話すよ。確かにポランスキーを殺ったのは私だ。ロゴスを通してムニョスから殺すよう依頼された」
「そうか。で、ミニッツ・サンダースってのは?」
「それはオーランド紛争の時の名前だ」
「九〇一後方支援部隊だな」
「あぁ。頭に九がつく部隊は特殊部隊で、作戦ごとに名前を変える」
「なるほど。それで今でもオーランド郡ではミニッツ・サンダースなわけか」
「そういうコトだ」
「分かった。話はそれだけだ。帰ってもいいぞ」
 アレックスは席を立って歩き始めたが、途中で止まって振り返った。
「そうだ。お詫びと言っちゃあなんだが、ゲイカクテルのホランド郡のボスが分かったぞ」
「なんだって!? 誰だ」
「ビアンカ・フュリー。三年前からロゴス公認のヤクの売人をしている」
「知らねぇな」
「珍しいな。ロンが知らないなんて」
「ゲイストリートにいるのか」
「あぁ。毎晩ジェット・ストリームのVIPルームで呑んでる」
「そうか。助かる」
「取引の当日、ビリーにビアンカの尾行をさせる」
「分かった。それは任せた。明日の捜査会議でも伏せておく」
「じゃあな」
 アレックスはロンの部屋を出て、自分の部屋へと帰った。