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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま (45)

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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま (45)野口英世記念館


 猪苗代町出身の細菌学者である野口英世の記念館には、
生家をはじめ、野口の遺品や資料などが多数展示されています。
生家は、野口の幼少期の姿をそのままに保っています。
生家では、野口が乳児期に火傷を負ったといわれている囲炉裏も、
実際に見学することができます。
門出にあたり、『我志をなさねば二度とこの地を踏まず』と
決意を刻んだ床柱も、間近に見学することが容易です。


 直下には、野口英世の遺髪を納めた「誕生地の碑」と、
野口が遺した格言を刻んだ「忍耐の碑」の二つの碑の他に、母シカが
篤く信仰していた観音にちなんだ観音堂なども、昔のままに
保存されています。


 「ねぇ、清子。お前は、なんで芸者になろうと決めたのさ」

 
 一通りの見学を終え、売店からソフトクリームを買ってきた恭子が
少し大き目と思われる方を、『はいっ』と清子に差し出します。
『世界のガラス館でも見に行こうか』と、2人で歩き始めた矢先です。


 「なんででしょう。
 あまり頭も良くないし、勉強も好きじゃないから
 高校進学は、最初から考えていませんでした。
 強いてあげれば、中学2年生の時に芸者さんの姿を見かけたことかしら。
 日光二荒山神社で偶然見かけた、
 粋な格好の芸妓さんたちの影響かもしれません。
 その時お会いしたのが、実は、今の春奴お母さんや、小春姉さん達です。
 あの時のお粉(しろい)の匂いと、艶やかな衣装に、
 心底、酔っちゃったせいかしらねぇ・・・・」

 「15歳でお母さんと離れ、別のところで暮らしを始めるなんて、
 寂しくはないの、清子は?」

 「恭子お姉さんは小さな時に、
 お母さんと死に別れているんでしょう?。
 それから比べれば、まだあたしの母さんはピンピンと
 元気に生きているんだもの、
 全然、寂しくなんかはありません」


 「なるほどね、そういう言い方もあるのか。
 でさぁ。あんた。いつまでこの会津に滞在をしているのさ?。
 市さんのお話によれば、1ヶ月おきくらいに、
 6人のお弟子さんたちのところを
 たらい回しにされるって聞いたけど。それは、本当なの?」


 「もともと、みなさんともに湯西川温泉に住んでいらしたそうです。
 今は、あちこちの温泉や花街などに散っていますので、
 いま湯西川に残っているのは
 春奴お母さんと、一番下にあたる豊春姐さんだけです。
 あわてて芸妓の修行を始める必要もないだろうと言うことで、
 半年のあいだはあちこちを見ておいでと、言い渡されております」


 「ふぅ~ん。ものは相談だけどさ、
 あんた。ここでの滞在をひと月ほど先に伸ばして、
 8月のお盆まで、ここへ居てくれないかなぁ」

 
 「もうひと月、余計に此処へ居ろというお話ですか?」

 「うん。あんたにやってもらいたい、ひと仕事というやつがあるのよ。
 というよりも、立場的にあんたにしか出来ない仕事が有んの」

 「何でもいたします。
 このあいだのラーメン屋の看板娘とか、酒屋の看板娘なら喜んで出来ます。
 このあいだは、少し疲れましたが、けっこう楽しいものがありました。
 それにラーメンもとびっきり美味しかったし、最高でした!。
 はい。恭子お姉さんの頼みなら、喜んでなんでもこの清子が、
 お引き受けなどを、いたします」

 
 「大丈夫かい、清子?。
 あんた。単細胞すぎるから、そういうところが見ていて危なっかしいわよ。
 安請け合いをするもんじゃありません。
 この間だって、ろくろく確認もせずに濁り酒を一気飲みしたりするから、
 あっというまに気絶をするんだよ。
 人の話を最後までちゃんと聞かないと、あとで
 苦労などをする結果になります。
 頼み事というのは、実は、あんたの小春姐さんのことなんだょ」



 「小春姐さんに関することですか?・・・・」


 「ウチのパパと、小春姐さんの仲のことは、
 15歳のお前でも、なんとなくだけど見当はつくだろう?」


 「はい。おおよそのことなら」


 「おおよそかぁ。微妙な配慮が必要となる、大人の世界の話だからねぇ。
 15歳のお前に、本当の意味で、中身を理解することができるのかしら。
 実は、あたしも、それだけが一番の心配の種なんだけど」


 「ウチ、もう立派に大人です!」


 「ふぅ~ん。で、例えば、なにが大人なの?」


 「え?・・・・た、例えば、
 例えばお胸も、以前から見れば少し大きくなってきた。
 それから、お尻もなんとなくですが、最近は、
 まぁるくなってまいりましたぁ!」

 「うん。大人の例えかたが少し微妙だね、やっぱりお前。
 例えば、さ。清子には初恋の人とか、好きな男の子は居ないのかい?。
 愛しくて恋しくなって、夜も眠れないくらい、胸が
 ドキドキするようなことは
 お前には、まったく無いのかい?」

 「はい。夜ならば、ぐっすりと眠れます」


 「あはは。可愛いねやっぱりお前は。15歳の清子は、最高だぁ!」


(46)へ、つづく