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八ヶ岳山頂直下の山小屋で、素晴らしい夕景に見惚れていた巳月鉄平28歳は、菖蒲春奈25歳・百恵23歳の美人姉妹に声を掛けられたのがきっかけで、鳳凰三山コースの登山に同行することになる。
　　この夜行１泊２日の山行は、姉妹にとって数々の忘れられない思い出を残すとともに、鉄平の素晴らしい人となりを知る絶好の機会となった。
　　鉄平の性格は、山、しいては大自然をこよなく愛すナチュラリストであり、更に謹厳実直な男らしさも兼ね備えていた。そして、この山行で早くも姉・妹ともに、鉄平へのほのかな恋心を抱かせる決定的な旅になった。
　　山行以後、常に２対１の三角デートが週一のペースで始まる。これまでは仲の良い姉妹だったが、それからは一人の男性に対する姉妹同士の恋の鞘当ての場となった。
　　また、自身の性格からも、それに中学時代の親友の忠告もあり、早急に姉妹のどちらかを選ばなくてはならないと思い込んでしまった鉄平。しかし、書道に代表される[和]の心を会得した姉・春奈と、エアロビックダンスの名手で、身も心も[洋]スタイルの妹・百恵、そのどちらを生涯の伴侶に選ぶか、二者択一に悩むところであった。
　　鉄平と姉妹を結ぶホットラインは、当初から百恵と鉄平のケータイによるメールだった。はじめは至って事務的だった鉄平からのメールが、その文面にかすかな変化が表れはじめた。それは、『鉄平の気持が自分に傾いている』証拠、と喜ぶ百恵。
　　そんなある日、鉄平から百恵の誕生日祝いにバースディ登山を提案されて、有頂天になって帰宅した百恵は、春奈宛てに届いた鉄平からの封書を見つけてしまう。ショックを受けた百恵に、どす黒い猜疑心が生れる。疑う心は、百恵に常軌を逸する行動に走らせた。
　　盗み見した手紙の内容は、鉄平が百恵抜きで春奈にデートを申し込むものだった。そして、密会の現場まで確認した百恵の心に、鉄平に対する・・・・・。