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紫陽花の寺

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紫陽花の寺





 窓の外の夕暮れの風景の中で、雨が静かに降っている。
壁に映写しているそのスライド写真は、ちょうど一年前に北川晴之が撮影したものだった。ピンク色の着物姿の写真の中の彼女は、寺の苔むした石段の途中で紫陽花の花の香りを愉しんでいる。その笑顔が可愛い。二時間前に別れた設楽野百合のその写真を見ると、北川晴之はもはや我慢できなくなって嗚咽を始めた。彼女とは、五年間も交際を続けてきたのである。
彼女は六年前、二年間交際した芦田勝という名の恋人と別れていた。芦田が交通事故に遭って病院に担ぎ込まれたのが、今から四時間程前の午後二時頃のことだったらしい。野百合の同僚で現在の芦田の恋人である志水明子が、携帯電話で芦田の大事故を野百合に報せて来たとき、北川と野百合は海を眺めていた。それが午後三時過ぎだった。
芦田は一人でバイクに乗っていて、信号無視の大型トラックと衝突し、重症を負ったという。その事実を知った野百合は、芦田の病院へ車で送り届けてほしいと北川に懇願した。野百合と病院の前で別れたのが、午後四時だった。
作品名:紫陽花の寺 作家名:マナーモード