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ACT ARME4 あたしの力

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「いや〜、ないわー。なんであそこで部屋が水浸しになって、それで戦闘が始まるわけ?訳がわからないわよ。」
「そ、それは、大切なものをビショビショにされて怒っちゃったからじゃないかな?」
「だからって、それで戦って部屋滅茶苦茶にしちゃ意味ないじゃん。」
「あ、アコちゃん。映画館の前で今見た映画の感想大声で言っちゃったら、今から見ようって人たちに聞かれちゃうよ。」
ここはキブの映画館。アコはどうやら今見てきた映画の出来にご立腹のご様子である。
それを宥めているのは、ルイン。ではなく、アコの友達であるフィーナ。能動的で、言いたいことをずかずか言うタイプのアコに対して、フィーナは割かし大人しめの、周りの気遣いを忘れない優しいタイプである。
ぶっちゃけ、作者的にはアコよりもフィーナの方がヒロインに向いていると思っている。


それからしばらくアコの愚痴は続き、それをフィーナは苦笑しながらも聞き続けた。
その後話題が徐々に逸れ、食べ物だ買い物だと、女の子特有のダベリングが始まり、画になる光景を振りまきながら、二人町道を仲良く歩いていた時だった。
「よお、そこのオンナのコ達。オレたちと一緒に遊ばねー?」
いかにもオツムがすっからかんですと言わんばかりの見た目と言動の男連中が絡んできた。
アコは無視を決め込み、怯えるフィーナを引き連れ、早々に立ち去ろうとした。
だが、肩を掴まれ止められる。
「ちょっと、そんなに冷たくすることないんじゃねー?」
「オレたち、結構キミたちを楽しませてあげることできると思うよ?」
しつこいヤンキーどもに対して、アコはウザったいからあっち行けと言わんばかりの視線を向けた。
「あんた達みたいなのと遊んだら、頭パープリンになるわよ。あっち行って。」
そのぞんざいな扱いに頭にきたのだろう。強引に肩を引っ張ってきた。
「痛っ、何すんのよ!」
「ちょっとつけあがりすぎじゃねーの?こっち来いや。」
「あ、アコちゃん・・・」
そのままアコとフィーナは、路地裏へと連れ込まれた。



「い〜や〜、いい天気だね〜。とても梅雨だとは思えない天気だよ。」
その手にコーヒーカップを持ち、縁側(この家、庭までついているのだ)に腰掛け、まったり午後を満喫中のルインである。
それに対し、この家のもう一人の住人は・・・
「うん、いい天気だね。穏やかだよ。」
あれ?珍しくレックものんびりとしている。これは、明日は確実に雨だな。
「でも17歳にしては大分年寄り臭い言葉じゃない?」
「何、いいんだよ〜。便宜上17って言ってるだけで、ほんとは自分の年齢知らないからさ〜。」
ルイン本人は軽く言ったつもりだったが、レックはルインの過去の記憶がないことを聞いているため、少しシュンとしてしまう。
「あ・・・ごめん。」
「これこれ、何を気にしておるのかね。わしゃあちぃーとも気にしとらんがや。主も気にすることはありゃせん。」
わざとらしい爺さん言葉はフォローのつもりなのか。そう受け取ったレックも笑ってつっこんだ。
「何時代の人のセリフだよそれ。でもさ、不思議な気持ちにならないの?自分の過去の記憶がないって。」
もし自分がルインの立場に立っていたら、自分の過去に大きな空白が空いていたとしたら。
多分、自分ならずっと気にかけ続けるだろう。もしかすると、記憶を失うような大きな事件に巻き込まれた可能性もある。そういうことを考え出すと怯えさえくるかもしれない。
だが当の本人は・・・
「そう?」
こんな感じである。
自分の過去にびっくりするほど無頓着なルインに、レックは思わずずっこけてしまう。レックとルインは、つくづく精神構造が違うようである。
「そう?って・・・。まあルインのそういうところは、凄いと思うけどね。」
「そうかな?」
「うん。ボクだったらそんな風にはなれないよ。」
急に褒められ、ルインは戸惑ってしまう。
「別に、なんか心掛けてることとはないけどさ。なんなら伝授してあげようか?」
「いえ結構です。そもそも、どうやって伝授するのさ?」
「為せば成る。まあ、記憶がないからって生活に不自由はしないし、知る機会があれば知ってみたいけど、別にいいかなってかんじかな。むしろアコちゃんみたいに、記憶があるからこそ苦悩することだってあるし。」
「アコの過去?」
うっかり口を滑らしたルインは、一瞬ハッとしたが、レックに気づかれないほど小さくニヤッとすると、話しだした。
「レックもそろそろ気づいているけどさ、アコちゃんって結構な才能の持ち主なんだよね。」
レックは、その言葉に同意する。まず、相手がこちらに剥き出しの敵意を向けてきても全く動じない。普通なら怯えて陰に隠れたっておかしくはない。
だがアコは怯えるどころか逆に喰って掛かることさえある。ただ、喰って掛かるだけかかって、あとはこちらに丸投げしてくるから困るのだが。
だが、こちらの手が及ばず、アコに攻撃が飛んでいったときは、攻撃を100%確実に防いでいる。
それに何より、時折アコの中から感じる莫大な孔である。この話の初めに書いたように、孔というのは、どんなに激しい修行をしたところで、精度は上がるが、その絶対量を増やすことは絶対にできない。
それは、その人が生まれた時に決定され、決して変わることがないのだ。
ただ、火事場の馬鹿力よろしく、窮地に立たされたりすると爆発的な力が出るのも事実であり、その辺の曖昧なところが、果たして孔とは一体なんなのだという謎につながっているわけだが。
話がそれた。とにかく、アコは生まれ持った大きな素質があるのだ。
「確かにそうだね。でも、だとしたらどうしてアコはあんなに孔を使うことを拒むんだろう?」
普通、あれだけの孔の持ち主なら、用心棒や研究者、は無理か。まあとにかく、引く手数多なのだ。
しかしアコは、ごくごく普通な生活を送っている。そういう生活が好きだという理由でも理解できるが、戦闘に巻き込まれた時などは、明らかに孔を使うことを拒否しているフシがある。
そんなレックの疑問に、ルインはわかりやすく答えてくれた。
「アコちゃんは・・・」

「ちょぉーっと調子に乗りすぎちゃったね。可愛いアマちゃん達よ。兄ちゃん達舐めちゃったら痛い目みるってことを、少し教えてあげないとな。」
下劣な言葉をあとに、アコに手を伸ばすヤンキー共。後ろでヒャッ!?と小さな悲鳴が聞こえる。どうやらフィーナも危ない状態にあるようだ。


「まったく。」
アコが呟いた瞬間、アコの目の前にいたヤンキー連中が大きく吹っ飛ばされた。
暴音と共に倒れた仲間を見て、フィーナに手を出そうとしていた残りのヤンキーが固まる。
アコはそのままつかつかと歩み寄り、ヤンキーの頭に手を置く。そして同じように吹き飛ばした。
「大丈夫?フィーナ。」
「う、うん。大丈夫だよ。アコちゃんは?」
「あたしはへーき。こんなことでやられちゃうようなやわなアコさんじゃないわよ。」
と、なんでもないことをアピールするが、フィーナの心配はそういうことではないようだ。
「でも、アコちゃん・・・」
フィーナが何か言う前に指を詰める。
「あたしがいいって言ってるんだからいいの。そんなに気にされると、かえって気まずくなっちゃうわよ。」
作品名:ACT ARME4 あたしの力 作家名:平内 丈