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『愛情物語』 ノクターン第2番 op.9-2 (ショパン)

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 冴子が滋に送られて家に帰ったのは、翌日の昼前である。日曜日でもあり、たかしなレディースクリニックは閉じられていた。
 病院の建物の裏手に、住まいの玄関口はある。
「ただいま」と言って、玄関を入ったところにある階段を上がり、自室に入った。
 君子は、土曜日はいつも実家に戻っている。母、つまり冴子の祖母の介護を手伝っており、日曜日の夕方に帰ってくる。
 父とは今は、顔を合わせたくない。
 家の中は静まり返っていた。

 12時を回った頃、何かを食べようと思い1階に下り、台所に通じている廊下から、扉が開け放しになっている応接室に目をやった。
 ソファの上に、横になって寝ている父の姿があった。前にあるガラステーブルの上には、ファイルなどが散乱して置かれている。書類が床の上にも、木の葉のように散っていた。
 来客があってそのままここで、遅くまで仕事に熱中していたのかな、と思いキッチンに行こうとしたが、思い直して部屋に足を踏み入れた。
 応接室で仕事をしていたことなど、かつてなかったからである。

「とうさん! とうさん?」
 部屋の中は暖房でムッとしており、生臭い臭いがしている。
 父の肩に手をかけようとして、そのまま固まってしまった。
 ヒッ、と喉をつまらせて目を大きく見開き、差し出した手をひっこめ胸に当てた。声が出てこない。
 どのくらいの時間そのままでいたのか、「キャ――ッ」と叫び声をあげると、ようやく電話をかけなければならないことに気付き、部屋を飛び出した。