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コメディ・ラブ

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めんどうなことになった






次第にテレビの枠が見えてきた。これは現実ではなく勿論ドラマだ。


画面の右下には続くとの文字が現れる


自分の部屋で友人の佐和子、哲也の三人でドラマ、ラブアゲインをみていた。


私はテレビを消して壁によりかかり、吐き捨てた。


「これの一体何がおもしろいんだよ。」


哲也も首をかしげながら言った。


「女の人は好きなんじゃないか」


すると佐和子がハンカチで涙を拭きながら満足そうに答える。


「うん、大好き」


私はそんな佐和子の様子を見ていたら、やっぱり女ってちょっと馬鹿なのかもしれないと思い何だか無性に腹
がたって言ってやった。


「ふーん。恋だの愛だのくだらねえことで公共の電波使うんじゃねえっつうの。」


この憤りを表現する為に思いっきり煎餅をかじってやった。


すると佐和子が世にも余計な超どうでもいい昔のことを言い出す。


「くだらねえっていうけど、美香ちゃんだって昔てっちゃんにラブレター書いたことあるんでしょう」


私は思わず食べていた煎餅をのどにつまらせて咳き込んでしまった。


哲也も動揺して意味もなく立ち上がっている。微妙な空気が流れる。


どうしよう。この場をなんとか乗り切らなければいけない。


「まぁ……そのおかげで恋とか愛のくだらなさに気づけたよ。てっちゃんありがとう」 


わざとらしくふざけて哲也に手を振ってみせた。


哲也は何か言いたげな表情でこっちをみているが、知らない。


そうだよ、身の程知らずにクラスの人気者のあんたに告白した私が悪かったよ。


気まずい空気を察して佐和子が話を変えた。


「それにしても、晃っていい男」


あいつの話か。


「この間週刊誌に8股かけてる現場とられてたよ。女の敵だ」


もう一度怒りが沸いてきたので煎餅を思いっきりかじりとってやった。


すると哲也が小さな声でつぶやく。


「かけるほうもほうだけど、ついてく女もどうかと思うぞ。」


佐和子が不敵な笑みを浮かべて言った


「ふふっ、いい男はねみんなでシェア  した方が、多くの女にいい男がまわってくるのよ」


開いた口が塞がらない。


哲也は得意げに言う


「ほらっみろ。」


思わず黙りこんでしまったが、そうそうこれだけは聞いておかなければならない。


「それで、どうしてこいつが村にいたんだよ」


佐和子も興奮して尋ねる


「そうそう。気になるわ。もしかして……」


哲也は急にもったいぶった話しかたになる


「実はな」


私と佐和子が息を呑む。


「なんと……今度このドラマの映画版のロケが……小山村であんだよ。一ヶ月泊り込み」


私と佐和子は一斉に同音異義語を口に出す。「えーーー」


私が下の音域、佐和子が上の音域だ。


「この間美香が晃さんに会ったのは、その宣伝番組とってたんだ」


興奮して立ち上がる佐和子


「いやー!!晃と何かあったらどうしよう。やだ。もう。想像しちゃう。あーっも」


私と哲也は佐和子に言った


「ないないない」


哲也は感動しながら言う。


「すごいだろ!!俺はこの村がようやく日の目を見るかと思うと泣けてくる」


佐和子は嬉しそうに拍手をしていたが、私はどうでもいい。面倒なことになりやがって。


「どうでもいいわ」


今の気分を表現する為に煎餅を最大の音をたててかじってやった。


しかし、佐和子がまたお花畑なことを言い出す。


「もしかしたら晃と付き合えるかもしれないのに」


私が現実を教えてやらなければ


「佐和子ね、芸能人と恋に落ちるってないないない。ありえない。ベタすぎる。昭和の少女漫画かって!」


佐和子がようやくトーンダウンして座った。


哲也は相変わらず「この村はな」と自分と村によっている。


あーあ、映画のロケなんて早く終わってとっとと帰ってくれればいいのに。


めんどくせえよ。


<小山村に晃様が来たぞ>

着いたのか?3時間も車移動だったから体が痛い。窓のカーテンから外を覗く。

本当に何にもねえくそ田舎だな。やだやだ。俺は生まれも育ちも東京。ダサくてイもくさいものは嫌いだ。当然な

がらこの村も嫌いだ。あぁー全部映画の為だ。我慢しろ俺。

この間の凶暴女がまたまとわりついてきたらどうしよう。

あー早く撮影終わって東京帰りたい。

再び外を見ると、スタッフ達が荷物を降ろし、懸命に撮影現場を作っている。

村人達も沢山見学に来てる。それにしても絵に描いたようなダッセー村人だな。コントかって。

ため息をつきながら、座席にもたれかかると同時に監督が挨拶する声が聞こえてきた。

「きょうから小山村にお世話になることになりました。村のみなさんよろしくお願いします」

村人達が拍手をして喜んでいる。そろそろ俺の出番か。

ロケ車からゆっくりと登場し、サングラスを外すと歓声が巻き起こる。わかってる、俺かっこいいよな。

「晃さん。お久しぶりです。小山村役場観光課の小村哲也です。」

「おお、課長。久しぶり」

「一か月全身全霊でロケ隊をお世話させていただきます。よろしくお願いします」

課長は深々と頭を下げる

俺は、かっこよく「よろしく」と手をあげてやる。歓声が再び巻き起こる。わかる!俺かっこいいもんな。

「あーいつきても、ここは山しかねえな。あっちをみても山。こっちをみても山。そっちをみても山。ってあれ?電波がない?まじかよ」

携帯を左右に振ってみるが無駄だ。

すると課長が自慢げに言った。

「うちの村は大丈夫です。時々はつながりますよ」

課長の顔を見ると、満面の笑みでOKサインを出している。こいつはなんて馬鹿なんだろう。この俺の携帯が圏外ってどれほど恐ろしいことが教えてやるが、事がことだけに小声で喋る。

「あーマジかよ。せっかくKKBのみさきちゃんといい感じにメールしてたのに。」

「KKBって今人気絶頂の……さすがですね。」課長はとてもびびっていた。

「だろ?」すると俺のマネージャーの義信がすかさず止めに入る

「晃さん、週刊誌にとられたばかりですし……」

が俺は気にしない。気分が乗ってきた。
「ついでにいうとKKBの洋子ちゃんと牧子ちゃんはこの間まで付き合ってた。」

「洋子ちゃんに牧子ちゃんも」課長は開いた口が塞がらないぐらい驚いていた。そうだろう。

「晃さん。社長にちくりますよ」と義信が怒る。

「わかったよ。」

俺はしぶしぶやめた。

その時、優海ちゃんとマネージャーの牧子が歩いてくる。

「あっ優海ちゃん、久しぶり」俺は必殺の晃スマイルで手を振った。

しかし、優海ちゃんと牧子は軽く頭を下げて、その場を通りすぎてった。あの冷たい所もまたいいな。たまんねえ

「優海ちゃんもねらっちゃおうかな」

と言うと、義信が必死の形相で止める。

「お願いですから」

「わかったよ。」

すると、義信が余計なことを言い出す。

「例の週刊誌で晃さんのブログに非難のコメントが殺到してるんです」

こんなくそ田舎に住んでいる課長もあの週刊誌のたった一回の記事を知っていた。

「あー8股の」
作品名:コメディ・ラブ 作家名:sakurasakuko