小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

コメディ・ラブ

INDEX|15ページ/67ページ|

次のページ前のページ
 

小山村の母



  こんなにも後味の悪いビールは久しぶりだ。

  誰一人として喋らない異様な空気の中、優海ちゃんの部屋で4人でビールを飲んでいる。

旅館の女将(っていうか俺の母ちゃんだけど)に頼んで酒とつまみを出してもらったはいいものの

「優海ちゃん。するめ食べる?」

「優美スルメなんてださいものいらない。」

晃さんが時々、優海ちゃんに話しかけてはいるけれど、こんな調子だ。

飲もうって言いだした本人の美香はさっきから黙ったままだ。

いくら美香が面倒見がいいからって、スーパーアイドルの優海ちゃんの説得は無理だよな。

なんて、駄目だ。俺が美香を信用しないでどうする。

晃さんは懲りずに話しかけている。

「優美ちゃんほらタラチーズがある」

優海ちゃんは向こうをむく。

「いらないもん。優海お肉が食べたい」

次の瞬間いきなり小山村の母が口を開いた。

「優海ちゃん、今からお肉食べさせてあげるから、ちょっと目つぶって」

優海ちゃんはこんな突拍子もない言葉に素直に目をつぶる。

美香がニコニコしながら言った。

「はい口を開けて」

優海ちゃんは素直に口を開ける

この子は本当は素直ないい子なんだなと思った。

しかしこの部屋には悪魔がいた。

「おい美香やめろ」

晃さんは唖然として声がでていなかった。

悪魔こと小山村の母はササ虫を口に入れた。

「あっこのお肉おいしい」

アイドルがささ虫を食っている。この村でも年寄りと美香ぐらいしか食わねえササ虫の佃煮を

スーパーアイドル優海ちゃんが食っている。

「優海、このお肉味付けも好き。甘くてさっぱりしてる」

優海ちゃんが久しぶりの笑顔で答える。

晃さんが唾を飲み込んだのがわかった。

今俺と晃さんは同じことを考えている。一心同体だ。

よし、優海ちゃんに見せるなよ。絶対正体を見せるなよ。

「今食べたのざざ虫っていうんだよ」

俺達の期待とは裏腹に悪魔が笑顔で物を見せる

悪魔が優海ちゃんに携帯の画像を見せる。

「ほら見て見てこれ」

「えっ。やだ。気持ち悪い!!」

優海ちゃんは慌ててビールを口に入れる。

「優海食べちゃったよ。えーん牧子さん!」

優海ちゃんが泣き叫んだ。

ほらみたことか。

優海ちゃんはすぐに泣きやんだ。

「……でもすごくおいしかった」

俺と晃さんは開いた口がふさがらなかった。

悪魔が笑顔で言う。

「でしょう?」

「すごい!優海って虫食べられるんだ。すごーい!!」

無邪気に手を叩いて喜んでいる。

俺は今やっと気付いた。

優海ちゃんは…………結構なおばかさんだ。






作品名:コメディ・ラブ 作家名:sakurasakuko