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「舞台裏の仲間たち」 53~54

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 「あら、それはそれで素敵ですねぇ。
 まるで、オードリー・ヘプバーンと、グレゴリー・ペックのようだわ。
 ふたりの恋人が、ローマの町をスクーターで駆け抜けるの。
 ロマンチックだったわ・・・・
 貞園が髪を短くしたら、それこそローマの休日のオ―ドリーみたいだわ。
 あなた良く見ると、とてもチャーミングですもの。
 お二人の恋路の邪魔などは、決していたしませんので、
 あとから、ゆっくりとついて来てくださいな」

 しっかりとヘルメットをかぶった貞園が、当然という顔をして
すでに後尾座席にすわっています。
ハンドルを握った瞬間に、ふたたび乳房が潰れるかと思うほど背中へ
強く密着をされてしまいます。


 「ねぇ順平。
 ローマの休日って何?
 オードリーって、あの映画スターのオードリーのこと?」

 「そうだよ、王女と新聞記者の、
 永遠に続く、たった一日の恋の物語だよ。
 1953年に造られた白黒の映画だけど、新人女優のオードリーが
 一躍世界中で人気者になった彼女の『出世作』だよ。
 オードリーが床屋へ行って、清楚なお姫様から
 一気にボーイッシュな短髪に変わるところなんか、実に衝撃的だった。
 とにかく、チャーミングな短髪に
 思わず息をのんだことを、今でも鮮明に覚えているくらいだ。
 そういえば、なんとなく貞園にも似ているねぇ・・・・
 映画のストーリーを知りたいかい?」

 「うん、面白そう。
 まるで今の、私たちみたいだわ 」

 「まぁ、・・・・その話はさておいて。
 ヨーロッパ最古の王室の王位継承者、
 アン王女(オードリー・ヘプバーン)は、欧州親善旅行で
 ロンドン、パリなどの各地を来訪した後に
 ローマで、駐在大使主催の歓迎舞踏会にも出席する。

 強行軍にもかかわらず、元気に任務をこなしていた王女だが
 内心では分刻みのスケジュールと、用意されたスピーチを披露するだけの
 セレモニーに、いささかうんざり気味だった。
 そのために就寝の時間になると、侍従たちを前に軽いヒステリーを
 起こしてしまう。

  主治医に鎮静剤を注射されたものの、気が高ぶっているため
 なかなか寝つけない。
 ふと思いついた彼女は、宿舎である宮殿をひそかに脱出をする。
 夜のローマをぶらぶら歩いていた彼女は、
 やがて先ほどの鎮静剤が効いてきて、
 道ばたのベンチに身体をぐったりと横たえる。


  そこを偶然通りかかったのが、
 アメリカ人の新聞記者ジョー・ブラドリー(グレゴリー・ペック)。
 若い娘がベンチに寝ているのを見て、何とか家に帰そうとするが、
 アンの意識は朦朧としていて埒があかない。
 彼女をそのまま放っておくこともできず、
 ジョーはアンを自分のアパートへ連れて帰り、一晩の宿を提供する。

  翌朝、うっかり寝過ごしたジョーは、
 まだ眠っているアンを部屋に残したまま、新聞社へ向かう。
 支局長から「アン王女は急病で、記者会見は中止」と聞いたジョーは、
 そこではじめて昨晩の娘の正体が、実はアン王女だったことに気づく。

  王女には自分が彼女の身分を知ったことを明かさず、
 ローマの街を連れ歩いて、その行動を記事にできたら大スクープになる!
 ふってわいたチャンスに色めき立ったジョーは、
 アン王女の特ダネを取った場合の破格のボーナスを支局長に約束させる。

  一方、ジョーのアパートで目を覚ましたアンは、
 思いがけない事態に驚くが、
 同時にワクワクするような気分も感じていた。
 アパートを出た後も、せっかく手に入れた自由をすぐに
 捨て去るには忍びず、街をのんびりと散策する。
 ジョーに借りたお金で、かわいいサンダルを買ったり、
 ヘアサロンに飛び込んで長い髪をショートにしたりと、
 ごくふつうの女の子のように楽しい時間を満喫する。

  アンがスペイン広場でジェラートを食べていると、
 彼女の後を追ってきたジョーに声をかけられる。
 偶然の再会を装う彼の「思いきって1日楽しんだら?」という声に押され、
 アンは宮殿に戻るのを夜までのばすことに決める。

 スクープに必要な証拠写真をおさえるため、
 ジョーは同僚のカメラマン、アービング・ラドビッチ(エディ・アルバート)も誘って、
 アンにローマ案内を買って出る。
 オープンカフェでは初めてのタバコを試し、
 2人乗りしたスクーターで街中を疾走する。
 真実の口や、祈りの壁など名所の数々も訪れた。
 夜は、サンタンジェロの船上パーティーに参加するが、
 その会場にはついにアン王女を捜しにきた情報部員たちが現れる。

  アンとジョーは情報部員相手に大乱闘を繰り広げた後、
 一緒に河へ飛び込んで追手の目を逃れる。
 つかの間の自由と興奮を味わううちに、
 いつの間にかアンとジョーの間には強い恋心が生まれていた。
 河からあがったふたりは、抱き合って熱いキスを交わす。
 お互いへの本当の想いを口に出せないまま、
 アンは祖国と王室への義務を果たすために宮殿へ戻り、
 ジョーは彼女との思い出を決して記事にはしないと決意する。

 その翌日、宮殿ではアン王女の記者会見が開かれる。
 アービングは撮影した写真がすべて入った封筒を、王女にそっと渡す。
 見つめ合うアンとジョー。
 「ローマは永遠に忘れ得ぬ街となるでしょう」
 笑顔とともに振り向いたアン王女の瞳には、かすかに涙の跡が光っていた。
 そして二人は、永遠に残るたった一日の恋に、
 静かにピリオドを打って、そこで別れる。
 それが私の大好きな、ローマの休日のあらすじだ。
 どう、気にいってくれたかい」