小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

フェル・アルム刻記 追補編

INDEX|14ページ/15ページ|

次のページ前のページ
 

〈さらにその後の彼らについて〉

 ルードとライカは共にアリューザ・ガルドを巡る冒険家となる。
 各地を転々とするうちに名声を勝ち得、さまざまな王国の実力者達の支援を受けながらさらなる冒険行を重ね、アリューザ・ガルドの未踏地域にも度々足を踏み入れる。歴史上は冒険家テルタージ夫妻として知られるようになる。特に1100年初頭におこなった、「天を彷徨う城キュルウェルセ」の冒険行は名著として広く知られることとなる。(一説によると、アリューザ・ガルドの識字率がこの時期を境に向上したらしい)
 彼らが結婚したのは(ライカが五十歳の成人を迎えた)1064年のこと。1070年に長女ティセシア(名付け親はサイファだという)、1079年には長男エウディスーンをもうける。冒険家を引退した後は、ライカの故郷ウィーレルにて慎ましやかに暮らした。
 聖剣所持者であったルードは、聖剣を持った瞬間から土の民セルアンディルとなったわけであるが、おそらく今の世界において彼以外にセルアンディルは存在しないと思われる。ティアー・ハーンとは終生に渡り良き友であった。

 ハーンは一時期フェル・アルム島に滞在するが、やがて去っていく。彼はディトゥア神族の長イシールキアのもとに赴いたのだ。イシールキアはディトゥアの神々を呼び寄せてハーンを裁く。そしてハーンは名実共に、ディトゥア神族の一柱すなわちレオズスとしての存在を赦されることになり、かつて身につけていたおのが闇の力を取り戻した。
 その後は聖剣ガザ・ルイアートを探すため、アリューザ・ガルドや諸次元を彷徨することになる。聖剣の絶大な力に干渉を受けない唯一の存在こそレオズスであり、レオズスもまた英雄の介添人として宿命付けられていることを自覚しているからだ。
 レオズスはいずれ歴史の表舞台に顔を見せることになるだろうが、それはまた別の物語。
 また彼は、何人かの子供をもうけたらしいが、本人に聞いたところで適当にはぐらかされるだけであろう。

 ウェインディルは、“混沌”に蝕まれてしまったフェル・アルム王国を復興させ、またフェル・アルムの民とアリューザ・ガルドを結びつける橋渡し役として尽力した。
 彼の種族、すなわちエシアルルならば、一定の期間(二百年ほど)を経たあとに肉体を眠らせて、次元の狭間にある“慧眼《けいがん》のディッセの野”に百年の間、精神を赴かせるのだが、ウェインディルはそれをすることなく、エシアルルとしての生を今生でまっとうさせることを決意する。
 ウェインディルは相談役として国王サイファによく仕え、ついには王位継承権第二位を獲得するに至るが、サイファの没後はフェル・アルム北部のウェスティンに館を構え隠居する。
 隠居後の彼はかつての悲劇を繰り返さないようにと、魔法の研究に没頭する。晩年近くなり、優秀な弟子と後継者を得、彼らと共に魔導学の復興にも大いに貢献した。

 サイファはよく国政に携わる名君となった。宰相らと共に国政をまとめる一方で、外交手腕には非常に長けていた。1060年、烈火の将軍ウェルキア・ケノーグと結婚する。同年に長男ジル、1064年に長女ルミエールを得るが、サイファは彼らに王位を継がせることがなかった。以来、フェル・アルムに王はなくなり、ワインリヴ王朝は終焉を迎えるが、フェル・アルム諸侯の中から長が選出され、サイファの遺志を継ぎ、よく国政を執ることとなった。フェル・アルムは強大な防衛力を有する一方で、領土の拡大をすることはなかった。後に魔導学発展の地となったゆえんであろう。
 サイファは変わらず、側近の目を盗んでフェル・アルム各地に出かけることがままあったという。大陸に渡り、ルード達のもとを訪れたという話もあながち嘘とは言い切れない。