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四神倶楽部物語

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 さて四つ目のお話しは、私たち四人が不思議な旅をする、そのきっかけとなったエピソードです。

 そうそう、あれは長梅雨も明け、いよいよ真夏が始まろうとする時節。もうすぐすれば夏期休暇に入ろうとしていました。サラリーマン全員がサマーバケーションへの期待を膨らませている、そんなある日のことでした。
 私、高瀬川龍斗は昼食から戻り、デスクでスマホを操作しながらニュースをチェックしていました。これといった興味のあるトピックスはなく、ただ漠然と指で送りながら眺めていただけでしたが。そんな無思考で虚脱な状態の時に、風早美月子、ミッキッコが突然歩み寄ってきたのです。

「龍斗、下のロビーに妹さんが訪ねて来てるって、今受付から連絡があったわよ」
「えっ、妹って? 俺の?」
 私は耳を疑いました。だって私は一人っ子で、妹なんていません。こんな反応を見せた私に、「白状しなさいよ、彼女なんでしょ」とミッキッコの目が明らかに疑ってます。
「違うよ、俺には恋人もいないし、もちろん妹なんかもいないよ。女友達はミッキッコと佳那瑠だけだよ」
 私はミッキッコの疑心を晴らすのが精一杯でした。

「ふうん、そうなの。だけど何か事情がありそうね。龍斗、ちょっとどんな女性か顔だけでも見に行ったら」ミッキッコが勧めてくれました。
「ああ、それにしてもな」
 私はなにか不安でもあり、また邪魔くさくもあって、どうしようかと迷いました。しかし、ここは重い腰を上げて、「じゃあ、ミッキッコも一緒に付いてきてくれないか」と同席を頼んでみました。

「なによ、ホント龍斗は、小心者なんだから。あの一条戻り橋で、お姫さんダッコして私を5月4日に戻してくれた時も、身体が震えてたわよね。まあ仕方ないか、付いて行ってあげる」
 こんなやり取りをした後で、私はミッキッコと連れだって、一階のロビーへと降りて行きました。すると、レセプションの片隅に小さな接客ブースがあるのですが、そこに年の頃は25歳前後の、ヤケに色白でスリムな女性が一人座っていました。


作品名:四神倶楽部物語 作家名:鮎風 遊