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四神倶楽部物語

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 こうして私は、沙羅こと、朱雀こと、風早美月子、そのミッキッコと京都駅に向かい、帰りの新幹線に乗りました。そして新横浜駅を過ぎ、もう僅かで品川駅です。
 ミッキッコも私も品川駅で降車します。到着前の車内アナウンスがあり、降りるために前もって通路に二人で並びました。まさにその時のことでした。二人の姿が車窓にぼんやりと映ったのです。

「あっ!」私は驚きました。それはほんの一瞬のことだったのですが、ミッキッコの姿が朱雀に見えたのです。それと私の姿が、どうだったのかと言いますと、これも一瞬だったのですが、龍に見えました。私はホント目を疑いましたよ。

 ミッキッコがそんな私に耳元で、「どうお、龍斗、やっと私たちの運命がわかったでしょ」と囁き、ニッコリと笑ってくれるじゃありませんか。私は「ほんと、そうだね」としか返す言葉が見つからず、ちょっと放心状態でボーと。
 そんな私にミッキッコはおっ被せるように、奇妙なことをさらに。「ねえ龍斗、青龍と朱雀の間にできる子供って、一体どんな子供になるんでしょうね」と。

「ナヌ???」
 青龍と朱雀の間にできる子供?
 その意味に考えを巡らす私に、ミッキッコは「冗談だってばあ」と言い放ち、あとは「じゃあね! 休暇明けに、またオフィスで会いましょ! バイバイ!」とケロッとした顔で手を一杯振って、さっさと改札口へと消えて行ってしまいました。

 こうして私は、品川駅でミッキッコと別れ、真っ直ぐアパートへ戻ったわけですが、紗羅と名乗る女性から受けた一通のメールから始まった5月4日のミッキッコとの出来事、その奇妙奇天烈さから私の脳細胞はどろどろに液状化してしまったような状態でした。これが原因で、ひょっとするとこのまま気が狂ってしまうのではないかと、人生の危機を覚えるほどでした。

 私はそんな脳が溶解した事態に陥っていたわけですが、ただ一つだけ自分なりに冷静であり、きっちりと自覚していたことがありました。そう、それは――私はサラリーマンだということです。
 この世が魔界であろうが、また現実の普通の世であろうが、花のサラリーマンには変わりはありません。

 まことに非日常的な世界を垣間見た私は、いつもの自称「オフィスの期待の星」に戻るために、何度も「サラリーマン、頑張って!」の励まし言葉「サラバッテ!」を繰り返し冷えたベッドの中で叫びました。その甲斐あってか、5月5日の明け方には脳もやや固まり、平常心を取り戻すことができました。


作品名:四神倶楽部物語 作家名:鮎風 遊