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Magic a Load

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「いやはや、君はなんという才能の持ち主かね。この成績ならすぐにでも弁護士になれる。」
頭が禿げていて髭をサンタクロースのように鎖骨部分まで伸ばしているその男は片手にワイングラスを持ちリチャードの肩を舐め回すように撫でる。
男はにんまりとしリチャードを見つめた。その表情はリチャードが鳥肌が立つのを感じるほど気味が悪いものだった。しかしリチャードは美の顔を頼りに素晴らしい微笑みを教頭に向けさせる。
「いえ、僕はそんな・・。たいした事をしていませんから。それに僕は魔法を信じながら勉強をしていないので、今回の成績もそこそこですよ。」
リチャードはワイングラスを置いて後ろに手を組み頬を赤くそめている。その顔に教頭はがははと大笑いしワイングラスを少し揺らした後、蟹股歩きで次に目をつけた生徒の方へとようやくその場を去った。

リチャードはきつく閉めていたネクタイを緩めテーブルに両手を置き腰かける。すると目の前には二杯目の赤いワインがリチャードの眼に映った。
リチャードは迷わずに赤いワインを手に取り今までの気分を落ち着かせようと一口飲み込んだ。
が、今までの気分よりもその赤いワインはもっと最悪な物だった。
リチャードはきっときつい目つきをワイングラスを持ってきた者に向けるとそこにはトレーをテーブルの上に置いて腹を押さえながら笑っている一人の青年がリチャードの目に映った。
リチャードはその男に周りえを気にせず怒鳴り散らす。
「シン!てめぇ!! これ・・。ワインじゃないだろ?・・・俺の嫌いな・・」
リチャードはシンの胸倉を掴んだがシンは平然な顔をしながらむしろ笑いをまだ堪えている状態でこの偽ワインの持ち主の方へと指さす。
リチャードはとても手が早い持ち主で次はその相手に向かおうとしたがシンにほっそりしたリチャードの手を掴まれた。
「あのねリー。今日は特別な日なんだぜ?喧嘩はだーめ。な?それより向こうにまだワイン沢山あったから取りに行こう!」
「お前・・・俺を酔わせて変な事したらただじゃすまねぇから・・・。」
しかしシンはリチャードの言葉ににっこりと微笑んだだけだった。そしてシンはリチャードの腕を組みワインが置いてある方へと向かう。

その様子をアンディは足を組み変えケーキを一口頬張った。アンディはリチャードに何故嫌がらせをしたかというと自分より成績がリチャードの方が上だったから。
今まで誰にも負けたことはなかった。しかも大好きな魔法の事までリチャードに侮辱されて最悪な気分に陥っている。
アンディはもう一口ケーキを口の中に頬張ると床石に黒い影がアンディの目に映った。
アンディはその黒い影に添って顔を上げた。
アンディはその影の人物を見ると口の中に入っていたケーキを思わず飲み込み喉に詰まったケーキをワイングラスに注がれている紫蘇ジュースを飲み干した。
その黒い影の人物はアンディの隣へとにっこり微笑みながら座る。
そしてステンドグラスから照らしだされている半分赤く染まっている三日月を見ながらその人物はそっと囁いた。
「今日はとっても良い日になると思うよ。最高の日だ、そうは思わないか?アンディ。」
「え?」
アンディが疑問の声を上げた瞬間、会場内でライトアップされていた照明が突然真っ暗になり周囲は騒がしくなっていた。がそれもすぐおさまった。ライトは何度か点滅しながら付いた。
アンディは黒い影の人物の名を呼んだがその姿はもうそこにはなかった。
「フランシス?」
「アンディ!」
アンディはその声がフランシスだと思って振り向いたがその声の主はフランシスではなかった。アンディは目をぱちぱちさせる。
「シン、どうしたの?そんな息を切らさせて。血相まで変えて。」
膝に手をつきシンはいつも以上に血相を変えながらアンディに言った。
「リチャードとサラがいなくなった!!」

「リー、おいリー!!ったく・・・どこへ消えたんだよ・・・。」
クリスマス会場を出てシンは不安げにリチャードを探すが途方に暮れる一方だった。
雪のざくざくという音にシンははっと顔を上げる、まさかリチャード?居て良かった・・と思ったが目に映ったのはリチャードが外に出る時に巻いていた深い色をしたグリーンのマフラーだった。
「アンディ・・・。それ・・リーのかい?」
「ああ。向こうの林の奥にある洞穴の近くにあったんだ。何度洞穴を叫んでもリチャードの声はなかったよ。・・。もう諦めるしか・・。」
「馬鹿な事言うなよ!!俺の大事な従兄弟だぞ?そう簡単に諦めてたまるか・・・。そうだ、アイツなら何か知ってるかもしれない。」
「?」
シンはそう言い最新型のiPhone5を手に取ると誰かに電話をかける。暫くし電話の相手の声がシンに届く。ディビットは相変わらず無愛想な声を出した。
「あーい、なんすか?なんの用?仕事中なんで用件なら早く。」
「・・なくなった。」
「はい?」
「リーとサラがいなくなった!!!」
シンの声がゲーム試作品の仕事場にも響き渡った。そのシンの声が大きかったのかディビットは思わずiPhone5を耳から離した。ディビットは暫くしiPhone5を耳にあてようとしたが隣の人物にiPhone5を奪われる。
iPhone5を奪った人物はシンに向かって怒鳴り散らした。
「なんだって?リーがいなくなったとかふざけるな!!お前言ったよな?大学へ行っている間はお前がしっかり面倒見るって!なのにそんなすぐ裏切るのかよ!!
この裏切り者!!」
「・・・えっとこれにはちゃんと理由が・・。」
シンのどもった声に構わずジェイコブは怒鳴り散らした。
「理由もくそもあるか!!!もう二度とリーをお前に預けたりは・・・・。っておい!むがっ。」
ディビットは激怒し興奮しているジェイコブを片手で押さえながらiPhone5を奪い返しシンに再び返事をした。
「えっと、悪り。後でそっち(大学)にコイツも連れて行くわ。とりあえず、その場から動くなよ?」
「ああ、やっぱお前頼りになるよ。」
「ばーか、じゃまた後で。」

大学のクリスマスパーティーが終了後シンたちは大学のすぐ傍にあるバーガーショップへと集まった。
深夜近くなので人通りも少なくちょうど良い。
色黒の女がバーガー店の帽子を置き一息つこうとした時、自動ドアが開く。色黒の女ははぁと面倒くさそうな溜め息をついた。
「ご注文は?ああ、えっとここでお召しあがりですか?それともテイクアウトで?」
「・・・・・。」
「すみません、お客様?って・・ちょっ!・・何?」
色黒の女は黒髪の青年にカウンター前から体を引き寄せられ突然抱きつかれたのだ。
色黒の女は青年が顔を俯いていたので誰なのかはまだはっきりと解っていなかった。
が色黒の女は青年に抱きつかれた時の温もりの感触で誰だがはっきりと理解する。
「シン?どうしたの?・・・ちょっと待って、シンの他にみんな・・どうしたの?・・やだ・・・今、店長に話してそっちの席に行くから待ってて。」
色黒の女は抱きついているシンをそっと離すと急いで店長に事情を話しに行った。
その後、すぐにみんなが座っている席へと移動する。
席に座ろうとしたがシンが再び色黒の女に抱きつく。色黒の女はシンのサラサラな髪を撫でた。
「何があったの?」
作品名:Magic a Load 作家名:悠華