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「舞台裏の仲間たち」 39~40

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 さらに渡良瀬川と桐生川の、二本の水利が
水力を多用した幕末から明治初期の機械化製糸のために、
とても大きな役割を発揮しました。
この頃から桐生では、『のこぎり屋根』と呼ばれる、片傾斜の
三角屋根が連なる独特の織物工場が建てられるようになりました。

 いまでも、本町1・2丁目周辺には、
木造のほか、石造りや煉瓦造りなど、桐生を代表する近代化遺産でもある
この、のこぎり屋根の織物工場が点在をしています。
のこぎり屋根は、北側の天窓から柔らかい光が差し込むために、
場内での手作業に適しており、また織機の音をうまく拡散できることなど
から、織物工場として、明治~昭和初期にかけて
さらに多くが建設をされています。


 しかし、安い海外からの絹製品に押されて斜陽化が進み、
昭和40年頃を境に、桐生の織物は歯止めの利かない衰退期に入っています。
最盛期には数百軒以上も有ったと言われているのこぎり屋根の織物工場群も
昭和の40年代の後半には、わずかに250軒余りにまで
激減をしてしまいます。


 使う用途の無くなったのこぎり屋根工場の再生プロジェクトの
ひとつとして市民の手による再利用への取り組みがはじまりました。
5連の三角屋根を誇った市内で一番大きな巨大な工場跡は、酒屋の酒蔵として
使われ、赤いレンガ作りの瀟洒な外観を持っている大正時代の織物工場は、
パン屋さんの工房として甦ります。


 全体としては、依然として放置状態が見られます。
解体をされ、一部が取り壊されて外観を失う工場なども増えてきます。
そんなとき、劇団の稽古場として織物工場あとを活用してはどうかと言う
申し出が、石川さんのもとに届きます。