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Yさんへの個人的な通信

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Yさんへの個人的な通信




 こんばんは。今日はみぞれの中を合羽を着て、パンクした自転車を押しながら帰ってきました。腰と足が悪いので、途中で倒れるのではないかと心配でした。推定気温摂氏三度。激しく降る雨に白いものが混入しているのを見ると、人生は楽ではないと、思いました。手袋を会社に置いてきたのを後悔しながら。
 辛い洗車とシートカバーの交換を済ませ、いつものように会社で熱いシャワーを浴びてから帰ってきました。会社で二時間ほど眠ったのは、自転車店の開店時刻に合わせるためでした。
 自転車のタイヤのパンクは、自らの不運を嘆かせるには最も効果的なタイミングでやって来るものです。雪に変わりそうな激しい雨の降る早朝です。暖かい季節に、朝の陽射しを浴びながらというのであれば、自転車を押しながら歩いて帰宅するのもたまにはいいとも思うのですが。
 自転車のパンクを直してくれる店はどこにあったかな?それが問題です。自転車の店がどこにあるか。勿論、そういう店は数限りなくある筈です。しかし、通勤の道の途中にそれがあるかどうかとなると……なぜかないものです。少し遠回りをするのであれば、数カ所を思い出すことができましたが。問題は、そのうちのどこが土曜日の朝営業しているかです。
 帰ったら熱いコーヒーを淹れて飲もう。そう、私は思いました。横殴りの冷たい雨が打ちつける長さ四百メートルの橋の上を歩きながらです。その前にYさんが送ってくれた柿を食べようか。六個送ってくれたうちの最後の一個が残っていたのを思い出したのです。その前には沖縄からパインアップルを送ってくれたなと、思いました。夏川りみのCDも、彼女が送ってくれました。やはり沖縄からポークの缶詰も送ってくれた。あと、アーサー海苔も。
 競馬場の前まで来ると、明日は有馬記念の日だと思いました。会社にあったスポーツ新聞を見たけれど、暫く競馬とは無縁ですから、そうか、年末だからな。そう思っただけでした。競馬も宝くじと同じで、無意味な浪費だと思いました。私は下手な小説を書き、下手な油絵を描きながら、夢を見ることもなく生きて行こうと思っています。
あとは映画を観るだけです。ブルーレイレコーダーには現在五十本余りの映画が録画してあります。溜まる一方の映画。もう一台ブルーレイレコーダーが必要になるかな?それでも二日前には、ニコール・キッドマンの「アザーズ」という映画を観ました。登場人物の殆どが幽霊。いつも霧に包まれているイングランドの離島の映画でした。ほかにどんな映画が録画されているのか、それがたのしみです。今も録画は進行中だろうか。
猫が住んでいる廃屋の横を歩いています。昨日の朝は白トラが屋根で日向ぼっこをしていました。今は雨が降っていますから、どこにも猫はいません。猫たちはどんなところで過ごしているのか気になります。
その先が釣り道具の店。当然「釣り」を思い出しました。もう一度釣りをしたいけれど、それは過去の思い出です。餌に食いついた魚の手応え。あれはやみつきにさせます。「魚信」こそが釣りの魅力です。雨の中でも、雪の降る年末にも、釣り船に乗った思い出があります。二十数年前の十二月三十日。あのときの寒さは半端じゃなかった。
 ところで「ハンパない」というのをよく聞きますが、「じゃ」をなぜ省くのか。ああいうことばは気持ち悪いですね。「みたいな」をやたらと挟んで喋るひとも多い。芸人と女子高生がどんどん日本語を穢していますね。いやな世の中。
 あった!やってる!自転車店です。時刻は恐らく午前十時半くらい?ちょっと高齢の店主が伝票の整理中です。明日は徒歩で通勤かと思っていましたが、自転車で出勤できる見通しが立ったので、急に幸運になったような気がします。あっ!雨が小降りになりました。
 そのとき、Yさんが自転車に乗れないと云っていたのを思い出しました。今頃は名古屋式モーニングを、どこかの店で食べているのかな?それとも三百枚の年賀状の宛名書き?

               了