小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

とある魔術の禁書目録【previous story】

INDEX|1ページ/1ページ|

 
「はぁ……不幸だぁ」
 少年は車の中から外の景色を見ながらつぶやいた。シンボルマークのツンツン頭もどこか萎れている気がする。
 現在、少年は法廷速度を余裕で下回っている車でしばらく揺られている。
 窓の外には会社名がプリントされている紙袋を持っている人やスマートフォンを触っているサラリーマン、赤ちゃんを連れた女性などの歩道を埋め尽くすほどの人が行きかっていて、その背景には青い空に少し掛かった雲と、高さはバラバラの建物が道路に沿って並んでいる。
 車は渋滞に引っかかることもなく、平地に流れる川のように滑らかに進んでる。おそらく時間帯のおかげだろう。
朝早くに家を出たが、もう太陽も南の空でいい感じに上から目線だ。
少年は車に乗っていることは嫌いじゃないが、さすがにこれだけ長い間揺られていると疲れきった様子。
 後ろの座席では少年の表情が時間と比例してグロテスクになっているころ、前の座席では、髪はオールバックで無精髭を生やしている男と、ブラウンの髪をウェーブさせている優しい雰囲気の女性が、
「あれ? 母さん、本当にこっちの道で合ってるの? 家出てからもう4時間なんだけど」
「あらあら。刀夜さん的には私のことが信じられないのかしら。大丈夫ですよ、ちゃんとスカイツリーへ向かっているわ」
「ちょっと母さん!! 目的地全然違うよ! 」
「あらあら、それならそうと早く言ってくださいな。でも、スカイツリーも見たいわ」
「わかった、わかったからとりあえずアイツの今日からの準備をしないと」
 などをいう微笑ましい会話が飛び交っていた。
 少年はもうすぐ小学生になるが、地元ではなくとある町の小学校へ入学する。引越しはしないが、少年は学校の近くの寮に一人暮らしをするつもり。
まだ親離れしたいという歳でもないし「やっふーーーーい!!!」と喜んでいたわけでもないが、寂しいという感情もない。環境が変わることや周りがみんな初対面になることが、ただただかったるかった。
 信号が青になって車が左へ曲がると、運転していた男が、
「お、見えてきたぞ。アレが今日からお前が住む町だ」
 男がバックミラーから頬杖をついてる少年を覗きながら呼びかける。
「……アレって言われても、ビルの上の部分しか見えないんだけど」
「あ、あははは……」
 目の前には、人が乗り越えられない高さの質素な壁が左右限りなく広がっている。
 中に入るには1つだけある空港か、同じく1つしかない入り口を通らなければならない。そのため、車で中に入るとなると唯一の入り口を通る必要がある。そこを通るにもIDが必要になるから、とにかく警備が厳重だ。
「母さん、ここからだと入り口まではどっちが近い? 」
「左……のほうが近い気がするわ。ほら見て、ここをこう行けばこの子が入学する学校へ近いわよね? 」
 女が地図を指で指し示した通りに車で行くと歩行者を蹴散らしながら歩道へ乗り込んだ後、400メートルほどのスタントマンも2,3滴チビる大ジャンプをして建物の屋上へ着地し、グラウンドを突っ切りながら陸上部を追い抜いて敷地内の寮へ爆走する。
「……うん、わかった、ありがとう」
 男はもう何も言わず、ハンドルを右へ切った。何も言わないのがこの男の優しさなのだろう。
 15分ほど壁沿いを走り続けると、中へ入る入り口が見えてきた。
 たった一つしかないため、かなり大きい。高さ3メートルほどで横は10メートルくらいだ。装飾などは一切なく、壁を作ってからそこだけ穴を空けたように質素。入る車用と出る車用に2車線ずつあって、その間は壁で区切られている。1車線ごとにIDを読み取る機械が片方についていて、計4台ある。
 出入りする車は普通の乗用車よりトラックや会社のロゴが貼ってある車がほとんどだ。
 男が窓から機械にIDを当て、遮断機が静かに上がっていく。
 薄暗い入り口を出ると、都市があった。建物は外と変わらず大小さまざま。違うところは、ドラム缶サイズのロボットが縦横無尽に駆け回ってること。それと、一番違うところは出歩いている人のほとんどが学生ほどの年齢だということだ。
 少年は口を半開きにしながら、まるでずっと欲しかったおもちゃを店の外から眺めてるかのように目を輝かせていた。
 男はそんな少年をバックミラーで見て、
「ふっ、すごいとこだろ、当麻。これがお前が今日から住む学園都市だぞ」
 少年――上条当麻は新たな環境への好奇心で頭がいっぱいだった。