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つだみつぐ
つだみつぐ
novelistID. 35940
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男性支配

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部落の役員をしていた頃、会合のあとはたいがい酒席になった。酒やつまみを用意するのは役員の妻たちであった。
酔ってだみ声で議論を続ける男たちを女性たちはうんざりしながら台所で立ったまま待ち続けていた。私はそれが気になった。
あまり酒に強くない私は途中からウーロン茶に切り替えて、汚れた皿などをまとめて台所に運んだ。もう12時を回っている。男たちは帰ってごろんと横になればいいが女たちはここを片付けて掃除をして、家に帰って家事を片付けて、翌日は男よりも早く起きなければならないのだ。
女性たちは私を見ると、「あ、ごめんなさい、気がつかなくて。」と謝った。謝る理由などなにもないのに、とわたしは思った。自分達の汚した皿を洗おうと思っただけだ。その時、「こら、つだ、なんばしょっとか!」と怒鳴られた。「なしてそがんことばすっと!」

こんな時「よそ者」は便利だ。「あ、もうそろそろお開きかなと思ったものですから、このお皿、もうつかわないし。」わざと東京弁を使って、田舎の風習に不案内な新参者として振る舞う。何しろ、私は最年少でほかの役員より10歳から20歳若かったのだ。正面から逆らうことはできない。
「実は私、明日早いもので、起きられないと困るものですから。」(嘘だ)
「仕方ないな、おお、もうこんな時間か、そろそろお開きにするか。」
やっとお開きになった。私は女たちに混じって後片付けをした。
しかし、とわたしは思った。「男が酒を飲み女が文句も言わずその世話をする」という図式を侵害した私を彼らは見逃さず、すかさず恫喝を加えた。女たちは手伝った私に誰も「感謝」せず、奇異の目で見た。「男らしくない男」。
男性による女性支配はこうして維持されるのだ、とわたしは思った。それを破るものは双方から孤立し、恫喝さえされる。暴力は男性から女性へだけではない。

作品名:男性支配 作家名:つだみつぐ