二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

ゆらのと

INDEX|127ページ/373ページ|

次のページ前のページ
 

第二部 七、


「桂さんはどう思いますか」
そう、一番近くに座っている者に問われた。
部屋の中にいる者たちの眼が、すべて、桂のほうに向けられる。
皆、攘夷党の同志である。
彼らは党首である桂の意見を聞くために黙りこみ、そのため、部屋の中は静かになった。
ここは党員のひとりが潜伏先として借りている家の二階である。
桂を含めて十人いる。
もちろん、それで攘夷党の党員全員ではない。
急遽、討論しなければならないことが発生し、時間の都合のつく者たちだけが来たのだ。
昼過ぎから集まって話し合っている。
内容は、他の攘夷志士の集団から攘夷党に持ちかけられた将軍の暗殺計画に参加するかどうか、である。
計画を持ちかけてきた攘夷志士の集団は武闘派として知られる集団だ。
今回の計画は、入念に調べられた上で判明した将軍の警護の隙を突くものであり、成功率が高そうに見える。
ただ、計画を実行するには人数が足りない。
そんなわけで、穏健派ではあるが実力があり信頼もできる攘夷党に協力を求めてきたのだった。
桂は皆の視線を集めながら、口を開く。
「俺は、この計画には参加しないほうがいいと思う」
その返事を聞いて、部屋にいる数人が軽く息をのんだ。
意外だったのかもしれない。
「それはどうしてですか」
納得のいかない様子で聞いてくる者もいた。
桂は答える。
「話ができすぎているように感じる。綺麗にお膳立てされて、さあ、ここに飛びこんでおいてと、誘われているようだ」
「つまり、罠だと?」
「俺の勘にしかすぎないが」
そう桂が告げると、皆、考えこむような表情になった。
だから、桂は続ける。
「偶然うまく空いたような隙に突入してみれば、そこに真選組の奴らが武器をかまえて待っている、そんな気がしてならない」
真選組には抜けたところがある。
けれども、あなどれない。
それどころか、桂は敵ながら彼らの優秀さを認めている。
たまたま警護に隙ができるにしても、それに合わせて計画を練ることができるほど早い段階に、なぜ、外部に情報がもれたのか。
この話は、胡散臭い。
「ですが、ただの勘で罠かもしれないとおそれて計画に参加しないのは、臆病ではないでしょうか」
攘夷党の中では一番若い志士が言った。
「おい、桂さんの勘をただの勘だなどと言うな。おまえとは経験が違うんだぞ」
その隣にいる党員がたしなめた。
桂は彼らを見て、ふたたび口を開く。
「いや、いい。たしかに、ただの勘にしかすぎんのだからな」
「桂さん」
「ただし、臆病者だと言われるのをおそれて、あやうい計画に参加するほうが臆病だと、俺は思う」
さらに、桂は言う。
「命はひとつしかない。だから、それを賭けるところを間違ってはならないんだ」
作品名:ゆらのと 作家名:hujio